どうすれば日本の農業は復活するのか?
前回のコラムでは、現在、日本の農業が抱える問題点について書きました。そこで、今回のコラムでは一歩進んで、具体的に日本の農業復活のために何をすればよいかを記したいと思います。
コメ価格維持制度がもたらした問題
現在の農業制度の問題点は、経済活動の基本である「ユーザニーズ(需要)の変化への対応」が十分にはできていないことにあり、それがそのまま食料自給率の低下につながっていると考えることができます。こうした問題の根底にあるのが、「コメ価格維持政策」ではないでしょうか。
戦後の農政は、「食料の安定供給」という旗印の下、コメの価格維持を行い、農家所得向上のため米価を重点的に引き上げてきました。しかしながら、それによって何が起きたかというと、米価上昇により米消費量が半減する一方、農家は価格が高く、収益を稼げる米を多く生産するようになったのです。それによって、米は過剰となり、結局、政府は「減反」を行う羽目に陥ったのです。この40年間近く、減反などの米生産調整に使った予算は、6兆円以上とも言われています。
また、米価の引上げは別の問題も引き起こしています。
米価引き上げの恩恵を受け、小規模な農家でも収益を上げることが可能となった結果、兼業農家が増えました。1965年以降、農家所得は勤労者世帯の所得を上回るようになったのです。とりわけ、零細稲作副業農家の所得は801万円に達し、勤労者世帯の646万円を上回っているという状況です。一方、稲作主業農家の所得は642万円となっています(出典:経済産業研究所山下主席研究員)。つまり、兼業農家の方が主業農家よりも儲かることになります。このため、稲作では主業農家の割合は7%にまで減少してしまったのです。
生産性は低く、高齢化も進む
今、日本では、農業政策を価格維持制度に頼り、農業の生産性問題への対策を怠ったツケが出てきています。価格維持の問題点は、農家が生産性を高める工夫をしなくなることにあります。決められた生産性さえ維持できれば価格は補償されるため、改善の努力は行われません。その結果、1953年まで国際価格より低かった日本の米も、今では778%という高い関税で保護されています。
また、統計を見ると、GDPに占める農業の割合は、1960年の9%から2000年には1%にまで減少しています。また、65歳以上の高齢農業者の比率は1割から6割へと上昇しています。食料自給率を上昇させたフランスでは54歳未満の農業者が6割以上となっているのとは大違いです。