「働かないおじさん」が会社にのさばる根本原因 企業もそろそろ限界が来始めている

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――若手社員の中には「働かないおじさん」を冷ややかな目で見る向きもあるようです。

「働かされ盛り」の若手社員の目には、中高年社員が恵まれているように映るのかもしれません。ただ実際のところ、日本の若者も就職に関しては、国際的に見てかなり恵まれています。

大卒者は新卒一括採用によって、専門的なスキルがなくとも正社員就職の道が開かれています。ジョブ型の欧米企業は、欠員補充での採用が中心なので、実務経験のない新卒者が職に就くのは容易ではありません。薄給・無給のインターンをしながらポストが空くのを待っている若者や、失業する若者もたくさんいます。

ただ若者の「冷やかさ」の中には、中高年に差しかかったとき、自分たちも彼らのようになってしまうのではないか、という漠然とした不安が含まれているのかもしれません。

軽々しい退職は禁物

――若手社員が企業内でキャリアを構築する方法はありますか。

前にお話ししたように、メンバーシップ型の雇用システムは、社員が自律的にキャリアを作れるようにはできていません。だからと言って、正面から制度に立ち向かうのは損です。メンバーシップに安住することへの危機意識を持ちつつ、社内で打てる手を打っておくのが、現実的だと思います。

例えばさまざまな機会を捉えて、周囲に自分が「専門家」を目指していることをアピールするなどです。日本の人事制度にはある種の柔軟性があり、社員の意思を一定程度くんでくれる場合もあります。

目指すキャリアにこだわりすぎて、残業や転勤、異動などの命令にまったく従わないのも得策ではありません。職場の許容範囲を見極めたうえで、できる限りのキャリアビルドを試みてはどうでしょう。

――転職によって、新たなキャリアを模索するという選択肢はいかがでしょうか。

若手社員にとって、うかつに会社を辞めてしまうのは最悪の選択肢です。正社員という安定した地位を失うことは、人生において大きなリスクです。ぎりぎりまで会社の中で実績を積むべきだと思います。

中高年も同様に、条件がいいからと早期退職を利用し、キャリアの見通しもなく辞めてしまうのは考えものです。早期退職後、成功したキャリアを築いている人は大抵、辞める前からある程度、その後のレールが見えていることが多いのです。若手であれ中高年であれ、軽々しく転職や独立を勧める人の口車には乗らないことが肝要です。

(ジャーナリスト:有馬知子)

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