「働かないおじさん」が会社にのさばる根本原因 企業もそろそろ限界が来始めている
高齢者雇用で増す「重荷感」
――なぜ今、中高年社員の早期退職が相次いでいるのでしょうか。
早期退職の構造は過去数十年、まったく変わっていません。年功序列型の賃金システムでは、中高年になると賃金が働きぶりを上回るケースが増えてきます。企業は彼らを定年まで雇い続けることに負担を感じ、早めに退出させようという圧力が働くのです。
1980年代に55歳だった定年は60歳に延び、希望する社員は65歳まで働き続けることも可能になりました。さらに政府は成長戦略で、70歳までの就業機会確保を打ち出しています。もちろんずっと昇給し続けるわけではありませんが、中高年の社員が会社を去るまでの期間が延びたことで、企業は彼らをより重荷に感じるようになった、と言えるでしょう。
――彼らはなぜ「働かないおじさん」と見なされてしまったのでしょう。
「働きぶりが給与に見合わない」のは彼ら自身の責任だけでなく、最初にお話しした年功序列型の賃金制度が原因でもあります。そして多くの日本企業は、中高年社員に管理職のキャリアパスしか用意していませんが、実際にはこのルートを外れる人も出てきます。
日本の「メンバーシップ型」雇用システムは、職務や勤務地などが限定されない雇用形態で、企業側が社員の勤務地や配属先の決定権を握っています。このため社員は自律的に、専門性を身に付けることが難しいのです。
中高年の社員が管理職コースを外れてしまうと、多くはスキルも持たないうえに、今さら新たな部署でキャリアを再構築するのも難しく、行き場を失ってしまいます。中には、職場に貢献できずにモチベーションを失い、定年まで会社にしがみつこうとする人も出てきます。