「働かないおじさん」が会社にのさばる根本原因 企業もそろそろ限界が来始めている

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――解決策はありますか。

「働かないおじさん」になってからでは遅すぎます。企業は20~30代の社員に対して、管理職とは別に、専門技能を身に付けるためのルートを設けるべきです。専門的なスキルは50代、60代になっても維持できるため、若い頃とさほど変わらぬ成果を期待できます。

労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎研究所長(写真:弁護士ドットコム)

働きぶりが賃金に見合っていない中高年社員に対する、最も手近で短期的な効果が見込める解決法は「リソースを減らす」こと、つまり早期退職です。

しかし、それは本来活用できたはずのリソースを捨ててしまうことでもあります。資源を資源として使えるようにするのが経営的にもベストの解決策ですし、労働者に対する企業の役割でもあるはずです。

――それは日本企業の中に、職務の限られた「ジョブ型」に近い働き方を作るということでしょうか。

そうです。「ジョブ型」の導入も今に始まった議論ではなく、長い間続けられてきました。

日経連は24年前、「新時代の日本的経営」という論文で、雇用の将来像を打ち出しました。その中ですでに、労働者は正社員と「高度専門能力活用型」という名のジョブ型社員、そして短期雇用労働者に3分されるという図式が示されています。しかし労働者は結局、正社員と非正規雇用に分かれただけで、「専門人材」は増えませんでした。メンバーシップ型の日本企業において、本当の意味で専門職が求められる状況にはならなかったということでしょう。

高齢者雇用義務化が「ジョブ型」後押し?

――ジョブ型の必要性が高まっている今なら、導入が進むのではないでしょうか。

政府の規制改革推進会議は、ジョブ型の普及に向けた法整備などを提言しています。しかし企業の自主性に任せても、なかなか前進しないのではないでしょうか。

なぜなら、雇用制度の改革には大きなエネルギーが必要だからです。企業は、持続可能性を高めるためには改革が必要だとわかっていても、目先の経営に精いっぱいで、なかなか手をつけられません。改革にエネルギーを割いたら職場が回らなくなる、あるいは競争に負けてしまう、というパラドクスに陥っています。

ただ、高齢者の雇用義務化の流れが、ジョブ型への移行を促す可能性はあります。中高年の社員が社内に増えれば増えるほど、企業としては、戦力として働いてもらうための対策を講じずにはいられなくなるでしょう。その中で、若手のうちに専門的なスキルを身につけさせる動きが加速するかもしれません。

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