「プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)」と名付けられたこの調査プロジェクトで、グーグルは社内の180のチームを対象に、生産性の高いチームに共通する要素を検証しました。グーグルがこれについて書いた記事によると、導き出されたいくつかの要素の中で、最も重要なものと結論づけられたのが「心理的安全性」、すなわち、「『無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ』と信じられるかどうか」でした。
誰かの顔色をうかがって満足に意見もぶつけ合えないような環境では、イノベーションは起きようがありません。個々のメンバーにとって、そのチームが「ある程度のリスクをとっても大丈夫」「失敗しても大丈夫」と感じられる「安全な場所」でなければ、チャレンジの機運は生まれないのです。
「強力なチーム」と「弱いチーム」の違い
安全な場所だとチームが思うにはどうすればよいでしょうか。そこで「Oh, No!モーメント」の共有が意味を持ちます。共有して、たとえ失敗したものであってもみんなで応援していることを示すことで、チームに徐々に「心理的安全性」をもたらします。私自身もリーダーとして、オープンに自分の失敗談や新しいチャレンジの顛末などをメンバーの一員として話すようにしています。
「強力なチーム」と「弱いチーム」の違いは何でしょうか。私は、前者が多様な強みを持った集まりなのに対して、後者は同じ強みしか持ち合わせてないチームだと思っています。強力なチームは、互いの違いや強さを認め合うから、補完し合うことができ、刺激しあうことでさらに強くなります。
昨今、ダイバーシティー(多様性)に加え、インクルージョン(受容性)という考え方が注目されています。ダイバーシティーとは、性別、人種だけでなく、その人の内面、すなわち思考スタイルや経験も含めた多様性のことで、インクルージョンとはそれを迎え入れることです。多様性は受け入れる素地があることではじめて機能します。
多様性を受け入れるには、先ほど述べた「心理的安全性」がチーム全体にあるかどうかが大きく作用します。互いに競争意識が高くピリピリしているチームには難しい課題です。
15年ほど前、私はノウレッジ・インフュージョンという人材コンサルティングを立ち上げたことがあります。コンサル会社を立ち上げる場合、定石に倣えばデロイトやPwCなどグローバルに展開する大手出身の熟練コンサルタントを招くところですが、私はせっかく起業するなら型にとらわれない大胆な発想で差別化を図りたいと考えました。
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