三菱地所、「手探り感満載」の有楽町再開発 どんな街になるかは、誰にもわからない?

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「大丸有」という言葉がある。大手町・丸の内・有楽町エリアの総称で、いずれも三菱地所が多数のビルを保有している。

このうち、大手町や丸の内については、1998年に発表された「丸の内再構築」計画を皮切りに、ビルの建て替えが順次進められてきた。2002年に竣工した丸ビルを筆頭に数多くのビルが建て替わり、現在も2棟の建て替え工事が進む。

一方で、築古ビルがひしめく有楽町エリアにはあまり槌音が響かぬままだった。だが今年1月、地所は有楽町街づくり準備室を設置し、開発方針を練り始めた。今回お披露目となった2つの施設はその初弾となる。

消費者目線の街

このタイミングで有楽町の再開発が浮上した背景には、大型開発の空白期間がある。2021年に大型のビル開発は一服。大丸有以外のエリアを含めても、2027年の常盤橋街区再開発プロジェクトB棟まで目立った案件は見当たらない。有楽町の再構築は、この端境期を狙って動き出した形だ。

大企業が軒を連ねる大手町や丸の内とは異なり、有楽町には東京国際フォーラムや有楽町イトシア、東京交通会館など商業や文化の薫りが漂う。地所の吉田淳一社長は、「(大手町や丸の内と比べて)有楽町には消費者目線で楽しめる要素が必要だ。若い人にも遊びに来てもらって、その中で新しい発想につなげられればいい」と話す。

すでに事業が確立された大企業よりもむしろスタートアップに照準を定めたのも、お堅いビジネスの枠にとらわれない有楽町の雑多な雰囲気を意識したものだ。

手法も「大」や「丸」とは一線を画する。建て替えによってビルを大きくし賃料収入を増やすのではなく、今回の2つの施設はビルをそのままに、中の機能やデザインに手を加えた。「ソフトの仕掛けをし、今後ハードの開発に生かしていきたい」(吉田誉・丸の内開発部長)。新しいビジネスを創出する「実験」で得られた果実は、今後の方針の下地となる。

とはいえ新規事業は「当たるも八卦当たらぬも八卦」の世界。施設を開業しても誰がどんなアイデアを持ち込むか読めず、とんと成果がでない可能性もある。地所自身「うまくいくかどうかはやってみないとわからない」と打ち明ける野心的な事業を、なぜぶち上げたのか。

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