大手不動産が次々参入「飲食ビル」が増える理由 都心でじわり増殖中、意外な高収益の秘密
台風が過ぎ去った10月15日、横浜駅西口からほど近いビルには20メートルほどの行列ができていた。行列の先にあるのは、縦長で黒い外観の飲食ビル。この日は野村不動産が開発した「GEMS(ジェムズ)横浜」のプレオープン日だ。地上7階、地下1階のビルは、焼き肉やイタリアン、地中海料理など飲食店だけが入居する「飲食ビル」だ。
2012年の「GEMS渋谷」から始まった飲食ビルの開発は、今回で13棟目。今後も銀座や中目黒、六本木など5棟の開発計画が控える。こうした飲食ビルは、野村不動産をはじめ、近年大手デベロッパーが積極的に開発を進めている。マンションやオフィスのほか、ショッピングモールなど既存の商業施設とも異なる魅力があるという。
形が良くない土地でも開発可能
「飲食店は収益が安定しており、好不況にも左右されにくいのが強みだ」。GEMSの開発を担当する林昌孝・商業事業部事業一課長は飲食ビルの強みを話す。オフィスのように一等地である必要はなく、大通りから多少奥まった立地でも、その飲食店に訴求力があれば足を運んでくれるという。「形があまり良くない土地でも開発が可能で、敷地面積が狭いため用地取得競争もオフィスやマンションほど激しくない」(林課長)。
出店エリアは「需給ギャップのある地域を狙う」(林課長)。第1号物件である「GEMS渋谷」は渋谷駅南口に位置するが、当時の駅南口にはオフィスが集積する一方、飲食店が少なかったことに目をつけた。冒頭のGEMS横浜でも、入居するイタリアンレストランの担当者はこう話す。「横浜駅西口には、格安居酒屋や値段の張るレストランはたくさんある。他方で客単価4~5000円の中価格帯の店舗は少なく、出店の余地があると考えた」。
飲食ビルはおおむね8~10階建てで、1フロアにつき1店舗が原則だ。焼き鳥や海鮮、エスニック、郷土料理など、同じビルでもできるだけ料理の方向性をバラけさせる。林課長以下開発担当者が自ら食べ歩く中でめぼしいレストランを掘り起こすほか、飲食店にビールなどを卸している酒造メーカーからの紹介も多いという。
「チェーン店ではなく、個性のある個人店を意識している」(林課長)。ただし、焼き肉店だけは決まって最上階。換気や排煙に特殊な設備を要するため、中途半端な階数に入居させると、ビル全体の設計に影響が及ぶためだ。
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