大手不動産が次々参入「飲食ビル」が増える理由 都心でじわり増殖中、意外な高収益の秘密

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雑居ビルとは異なり、新築で小ぎれいな飲食ビルは賃料が高い。詳細な坪単価は非公開だが、集客力の高い1階ともなれば、賃料は通常の店舗の数倍にも上る。あるGEMSの1階に入居する飲食店の担当者は、「当初はディナーのみでの営業を考えていたが、(賃料負担を賄うために)ランチやカフェタイムの営業も行っている」と話す。こうしたテナントにとって、ディナータイムでの利益率の高いアルコールも欠かせない。

飲食ビルであることをアピール

GEMSが軌道に乗ったことを見てか、他社も飲食ビルの開発に乗り出した。東京建物は2015年より「FUNDES(ファンデス)」ブランドで、飲食ビルの開発を進める。今年8月には4店舗目となる「FUNDES五反田」を開業した。

「上層階は集客が難しく、テナント入居に工夫が必要だ」。FUNDESの開発を担当する大矢英理子・商業事業第一部主任は、飲食ビルの営業事情を打ち明ける。縦長の飲食ビルにとって、上階に行けば行くほど看板が目に入りづらく、どんな店が入っているのかが伝わりづらいため集客が難しい。

「GEMS神宮前」の入り口には「FOOD TOWER」の文字。1階にスポーツ衣料店が入っていることもあり、飲食ビルであることを強くアピールしている(記者撮影)

そこでFUNDESやGEMSではビル入り口に入居する飲食店の写真やメニューを掲げ、デジタルサイネージも活用して上階にも飲食店が入居していることをアピールする。「1階がコンビニや小売店だと、上階にオフィスが入っている印象を持たれてしまう」(大矢主任)ため、一部のビルを除いて1階にも飲食店を入居させている。

ただしFUNDESの場合、上から下まですべて飲食店で染めることにはこだわらない。11階立ての「FUNDES五反田」では、10階と11階に診療所とエステサロン、9階にはレンタルスペースを入居させた。レンタルスペースではビル内の飲食店にケータリングを注文することができ、間接的に飲食店の回転率を上げる仕組みだ。

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