大手不動産が次々参入「飲食ビル」が増える理由 都心でじわり増殖中、意外な高収益の秘密
オフィスビルなどの開発を手がけるヒューリックも都内で「HULIC &New(ヒューリックアンニュー)」ブランドの商業ビルを4店舗展開し、ビルによっては飲食店がテナントの過半を占める。「上階なら眺望をアピールできるため、物販よりも飲食店のほうが集客上の強みとなる場合もある」(須藤亘平・バリューアッド事業部グループリーダー)。
ポートフォリオを最適化
銀行の入居するビル賃貸から出発し、現在も硬派なオフィスビルが主力の同社にとって、居酒屋やアパレル、ホビーショップなど柔らかいテナントが入居するビルは異色に映る。
「人口減少や規模が変化する中で、事業ポートフォリオの見直しにも着手している。オフィス以外にも開発のメニューを広げていきたい」(牟田神東裕二・バリューアッド事業部長)。都心ではオフィスに適するような大きな土地の取得が難しいが、商業ビルであれば土地の形や大きさに柔軟に対応できるため、仕入れた土地に対する開発メニューが広がった。
野村不動産、東京建物、ヒューリックと三者三様の飲食ビルを開発しているが、共通項もある。開発済みの飲食ビルはいずれも、系列リートに売却されていることだ。
野村不動産の場合、これまでは「プラウド」ブランドのマンションや「PMO」ブランドのオフィスビルなどを手がけていた。だが投資家からは、「プラウドはもうわかったから、ほか(の種類のアセット)はないのか」(野村不動産の小島達也・商業事業部長)という声が上がっていたという。
同社は今年3月、GEMS4棟(新橋、茅場町、新横浜、なんば)を計110億円で系列リートに売却した。中でも「GEMSなんば」は開業からわずか3カ月足らずでの売却となり、早期に資金回収を果たしたことになる。東京建物は今年6月に「FUNDES上野」を38億円で、ヒューリックも2017年11月に「ヒューリックアンニュー新橋」を31億円で系列リートに売却した。
稼働が安定している飲食ビルは、投資家のニーズにも合致する。加えて、規模の小さい飲食ビルには財閥系の最大手デベロッパーがあまり進出しておらず、小回りの利くデベロッパーが先んじて市場を開拓している。
11月には大阪地盤のダイビルも、秋葉原駅前に飲食ビル「ビトアキバ」を開業する。13テナントのうち10テナントを飲食店が占め、担当者は「飲食店は稼働が安定しており、一定の賃料も取れる」と意気込む。テクノロジーの発達は小売店を駆逐する勢いだが、空腹までは満たせない。飲食ビルの開発は今後も続きそうだ。
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