リート初の「敵対的買収」意外な結末の一部始終 1号上場から18年、制度的不備があらわに

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さくら総合リートをめぐり、Jリート史上初めての敵対的買収劇が繰り広げられた(記者撮影)

Jリート(上場不動産投資信託)史上初の敵対的買収劇は、制度の間隙を突いた形での決着となった。

8月30日、都内の貸会議室には張り詰めた空気が流れていた。この日、さくら総合リート投資法人との合併を求める2つのリートが綱引きを繰り広げた。結果は、三井物産などをスポンサーとする投資法人みらいとの合併案は定足数が満たされずに上程されず、独立系のスターアジア不動産投資法人との合併案が可決された。

1日に投資主総会が2回開催される異常事態

これで一件落着かと思いきや、関係者からは合併手続きの疑義や制度上の不備を指摘する声が上がっている。

まずは経緯を簡単に振り返ろう。事の発端は今年5月10日、スターアジアの運用会社がさくらとの合併を提案したことに始まる。物件運用の不手際や運用コスト高などを理由に、さくらに代わってスターアジアが運用を担う方が投資家の利益になるというのが言い分だ。

寝耳に水の合併提案に対してさくらは猛反発。スターアジアの提案を受け入れないよう投資家に訴えるリリースを発表した。その後、両方の運用会社は、運用会社としてどちらが適任かを争う展開が続いた。

事態が動いたのは6月28日。スターアジアが関東財務局に対して申し立てていた、合併の可否を決する投資主総会の招集が認められたのだ。スターアジアは当時、さくらの投資口の約3.6%しか保有しておらず、少数投資主による総会の招集請求が認められるかどうかが注目されていた。

招集請求を認めないよう働きかけていたさくらは、反撃に転じた。同じ6月28日、さくら側も自ら投資主総会を開催することを発表した。その結果、スターアジアとさくらがそれぞれ主催する総会が、同じ8月30日に開催されるという異例の事態となった。

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