リート初の「敵対的買収」意外な結末の一部始終 1号上場から18年、制度的不備があらわに
さくらが修正動議を提出したことで、みなし賛成制度を適用すると矛盾が生じるため、適用されなくなるのだ。スターアジアも総会2日前の8月28日、修正動議の存在を理由にみなし賛成制度を適用しないことを表明した。
スターアジアも、さくらが主催する総会でのみなし賛成制度を活用できないように策を講じた。「スターアジアの合併提案が否決されるまで、さくらはみらいとの合併提案を決議できない」という趣旨を投資法人規約に盛り込む議案をさくら主催の投資主総会に提出した。午前中のスターアジア主催の総会で合併提案が可決された後、午後に行われるさくら主催の総会でみらいとの合併提案が可決され、スターアジアの提案が骨抜きにされることを防ぐ狙いだ。
個人投資主はさくら、みらいに厳しい声
こうした水面下の暗闘の結果は、冒頭の通りだ。スターアジア主催の総会では合併提案が可決され、さくら主催の総会は定足数を満たさず議案は上程されなかった。
投資主総会で議決を行うには、一定割合以上の投資主の出席(定足数)が必要だが、これは議案によって過半数の場合と3分の2の場合がある。スターアジア主催の総会は過半数、さくら主催の総会は3分の2が定足数だった。
さくらとみらいは「みなし賛成が適用されていれば、われわれの合併提案が可決されていた」と悔しさをにじませる。だが、みなし賛成がなくてもスターアジアとの合併提案が可決された事実は、さくらとみらいに重くのしかかる。
午前、午後ともにスターアジア側に票を投じたという60代の男性は、「提案内容はスターアジアの方が有利だ。さくらは、みらいとの合併が投資主の利益になると言うが、スターアジアからの合併提案を受けて慌てて対応した印象を受ける」と手厳しい。同じくスターアジアの提案に賛同した50代の男性も「みらいは自身の格付けを上げることだけを考えている印象を受ける」と話す。
他方で、合併が承認されたスターアジア側も、前途洋々というわけではない。今回承認されたのは完全な合併ではなく、スターアジアの運用会社の下にスターアジア不動産投資法人とさくら総合リート投資法人という2つのリートをぶらさげる形をとる。2つの投資法人を合併するには、さくらが諮ったような合併提案をスターアジア自身も行う必要がある。
ただし、合併内容について事前に合意したみらいと異なり、スターアジアは合併比率などの条件を非公式に提示したのみで、さくらとの正式な合意には至っていない。同社は今年末にも合併の承認を求める投資主総会を改めて開く予定だが、提示した合併条件が投資主の意向に沿わなければ、スターアジア自身が合併を阻まれるリスクがくすぶる。
約4カ月にもわたった買収劇は、Jリートをめぐるさまざまな制度的不備を浮き彫りにした。東証に初のリートが上場してから、今月でちょうど18年。これを機に、リートのあり方を今一度点検する必要がありそうだ。
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