井口:シリコンバレーに本拠地を構えて、世界基準で考えるということは重要です。たとえば、今、日本の携帯メーカーは「5万台売れればOK」と言っている。ただ、世界を見ると、iPhoneやギャラクシーは5000万台というレベル。「1000倍」ですよ。その中では、部材調達コストやR&D(研究開発)コスト、あるいは広告宣伝の効果、スケールメリット、あらゆる点でケタが違うんです。
テレパシーは今、世界基準でチャレンジできるポジションにいる。グーグル・グラスのコンペティターは、テレパシーしかいない。ウエアラブル端末のマーケットは、インターネット・オブ・シングス(物のインターネット)で、スマートフォンの数倍、数十倍のスケールを持っています。今、世界中でスマートフォン出荷台数は10億台を突破しています。その数倍、数十倍売れる端末……。その端末に投資できるチャンスがある。しかも、グーグルには誰も投資はできませんから、実質テレパシーのみ。テレパシーはウェルカムです、投資、できちゃいます(笑)。
井口さんがひとつの方向性を示している
伊佐山:井口さんのパワーや魅力が、シリコンバレーでも通用するということは、重要なポイントです。もちろんみんながみんな、まねできないと思います。それでも、シリコンバレーで認知され、メディアでも取り上げられ、資金調達につなげ、いい人材の獲得に結び付けている。あとは、最後のいちばん難しい事業を成功させることだとは思うのですが、こうした一連の連続性をつくっていくことから見習う要素はたくさんあります。
世界のベンチャーの舞台では、井口さんくらいやらないと勝負すらできないという状況。繰り返しになりますが、ベンチャーはスマートに格好よく勝つなんて無理なのです。そういう意味で、井口さんがひとつの方向性を見せてくれているのは、日本の若い人にとって大きな財産になると思いますね。
井口:僕は「日本の中での井口さん」のイメージはどうでもいいと思っています。世界で考えると、日本のテクノロジー、デザイン、コンテンツ、アート、ビジネスマン、起業家……それぞれめちゃくちゃレベルが高い。それは手前みそでも、我田引水でもありません。それは、シリコンバレーにきて、初めてわかりました。
世界で戦うとき、「日本からシリコンバレーに行く」というのは貴重な存在。世界レベルの勝負で十分ユニークなポジションをとっている日本という国が持っているものを、使わない手はない。
伊佐山:現場の声としては心強いですね。シリコンバレーでテクノロジーといったら、今は韓国が目立っていますが、日本もポジションを持っています。まだまだ日本のテクノロジーが世界でやるべきことがあると思う。製品力だって、デザイン力だって、まだまだいける。日本の中にいると「日本はダメだ」という雰囲気にのまれてしまうのかもしれませんが、もっと世界に出て行く、井口さんのような人がいてもいいと思いますね。
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