求められる人材評価軸の変化--ダイバーシティ推進で大きく変わる日本型人事制度 第2回(全3回)
さて、この制度がこれまで機能してきたのは、勤続年数と求められるパフォーマンスの間にある程度、正の相関関係があったためだ。かつてのパフォーマンスは経験を積むことで身につくものが多く、年齢が上がれば成果も向上していくのが一般的だった。
だが、環境変化によってパフォーマンスの内容に変化が起こってきている。日本企業が持続的な競争力を維持するためには高付加価値製品の提供や新たなビジネスモデルの創造などがこれまで以上に必要とされているが、こういった分野のパフォーマンスレベルは同じ年齢でも人によって著しく異なる。
企業を支えるような新たな製品やビジネスモデルを開発する人もいるし、一方で企業にとってお荷物となる人もいる。勤続年数とパフォーマンスの相関関係は以前に比べるとかなり弱くなってきているのである。
そのため、評価軸を勤続年数など属人的要素から直接パフォーマンスに変えることが急務となっている。その際、社員の公平感・納得感を考慮して、本人のコントロールできる割合の少ないアウトプット部分のパフォーマンスだけでなく、パフォーマンスを生み出す行動も評価基準とする必要がある。さらに、人的要件についても基準を属人的要素からパフォーマンスとの関連が強い経験・知識・スキルに変えていかなければならない。
ダイバーシティを推進しようとすると、このように人材の評価軸を大きく変化させることが不可欠となる。だが、これまで長期にわたって使われてきた日本型人事制度を短期間で変化させることは非常に難しいことだ。まさに「言うは易く、行うは難し」である。
日本能率協会で人事専門誌『人材教育』の編集長等を歴任。英リーズ大学で人材マネジメント(HRM)の修士号、英バース大学で博士号(Ph.D)を取得。専門は人材マネジメント。2005年より現職。
社会人対象のMBA教育を行う同学科で、人材マネジメント、組織行動、リーダーシップなどの科目を担当。主な著書に『日本型賃金制度の行方』『HRMマスターコース』(いずれも単著)『戦略とは何か?』(翻訳)などがある。
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