「月面基地」実現へ活きる日本のすごい住宅技術 JAXA・極地研・ミサワホームが南極で実証実験

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宇宙探査イノベーションハブでは、探査研究のあり方をこれまでのJAXAから発注する形から、企業などからの提案をより重視するものへ転換する一方、宇宙関連はもちろん、地上の産業への波及を同時に目指している。

今回のケースでは、JAXAは南極移動基地ユニットの実証実験から極地である南極と宇宙での共通課題の解決策を探し、その成果を将来的には宇宙、とくに月面の有人拠点(基地)の建設実現に役立てようとしているわけだ。

建設の側面について補足すると、宇宙服を着た宇宙飛行士が一から行うのは物理的な意味で現実的ではないが、ある程度、地球上で完成した、軽量な資材を月に送れるようだとより実現性は高くなる。

さらに、遠隔操作や自立型ロボットによる無人建設の仕組みが進展した場合は、実現性がより高まる。そうしたほかの分野におけるイノベーションを結び付けることで、月面有人拠点の実現に近づけることも、今回の実証実験の狙いとされている。

未来型住宅の開発にも貢献の可能性

月の有人探査計画は、アメリカが国際宇宙ステーションで協力関係にある日本、ロシア、欧州、カナダなどと共に2020年以降に具体化させることを表明している。その中で、有人拠点の建設も含めて日本への期待は大きいようだ。

JAXAの久保田孝・宇宙探査イノベーションハブハブ長によると、「月面有人拠点の研究はNASAなど各国で行われているが、今回のような(エネルギーやセンサーなどの新技術を用いた持続可能な)インテリジェント住宅という意味では日本が世界の先を行っている」とのことだ。

もっとも、月の有人探査には莫大なコストをはじめ、エネルギーや食料の確保などクリアすべき課題は山積みではある。当然ながら、南極移動基地ユニットそのものは月面に持ち込み、すぐに使えるものでもない。

ただ、この実証実験が月や火星を初めとした人類の宇宙進出へ向けたチャレンジの端緒の1つであることは間違いない。また、少子高齢化の影響から元気がないとみられがちな日本の住宅産業にとって、先行きの明るさを感じられる話題だと考えられるため、紹介した。

ミサワホームはその成果を未来型住宅へ発展させるための検討を行うとしている。そのことも含め、南極移動基地ユニットの実証実験の今後の行方に注目したい。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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