「月面基地」実現へ活きる日本のすごい住宅技術 JAXA・極地研・ミサワホームが南極で実証実験

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厳寒地域で使用されるものだけに、寒気の侵入を妨げる気密性についても配慮されており、ユニットを連結する素材にはダイビングスーツに使われ、扱いも容易なファスナーも採用されている。これらにより、4~6人で5~6時間で完成できるという。

南極移動基地ユニットの内部の様子。各種設備が予め設置され、メンテナンスなども容易になっている(筆者撮影)

配線・配管、内装材、各種設備などは予めユニットに設置済みとなっている。また、それらは同一モジュール化されているため、移動や点検、修理、交換なども容易に行えるよう工夫されている。

第61次隊の隊員による試験施工も実施済みだ。参加した青山雄一副隊長兼越冬隊長は、「現地でこれまでに建物建設に携わった経験があるが、それに比べると非常に施工性が優れていると感じられた」と話していた。

太陽の光・熱を活用 CO₂濃度の制御も

エネルギー関連の新技術では、「カスケードソーラーシステム」が採用されている。太陽光パネルで発電と集熱を同時に行い、室内の暖房などに役立てるというもの。建物自体の高い断熱性能もあり、室温を10℃程度にすることができると想定されているという。

また、発電電力はCO₂濃度を制御するセンサーの情報と連動した換気システムにも活用される。換気量を最適化することでエネルギーと熱のロスを削減するうえ、雪に閉ざされることがあるため、室内のCO₂濃度の監視を行うものだ。

このほか、温度と湿度、火災の検知など隊員の安全や快適の確保につながる屋内環境、建物の傾きや地盤沈下、気圧や気密の状態など状態をリアルタイムで監視する躯体センサーも搭載し、南極の過酷な環境下でも持続的に使用できうるよう工夫されている。

ところで、南極移動基地ユニットの実証実験は、2017年のJAXAによる「宇宙探査イノベーションハブ」の研究提案募集に対して、ミサワホームとミサワホーム総合研究所が「持続可能な新たな住宅システムの構築」として提案し、採択され実現したものである。

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