東大卒女性の結婚相手は、7割が東大卒? 結婚と学歴の間に交錯するホンネとタテマエ

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みんな結婚したいと思っているのに結婚しない社会。その要因のひとつとして、女性の高学歴・高収入層と男性の低学歴・低収入層とのミスマッチを指摘する人がいます。あるキャリア女性向けネットサイトの調査で「年収300万円で家事育児に協力的な人」と「年収1000万円で非協力的な人」のどちらをパートナーにしたいかと聞くと、6割以上が「年収300万円で家事育児に協力的な人」を選ぶという結果が出ました。ホントでしょうか?

そのサイトの参加者が高学歴・高収入の女性中心であることの影響だと考えられますが、非正規雇用の男性は、現実にはなかなか結婚できません。年収だけではなく、考え方や知識といったものが効いてしまうのかもしれません。ただそれ以前に下の図で見ても、女性→男性では、経済力や職業が重要な条件になっています。「低学歴・低収入でも家事育児に協力的な男性」がもう少し評価されたら、この社会の結婚の風景は変わるのではないかと思うのですが。

出所:国立社会保障・人口問題研究所『第14回出生動向基本調査』より作成

経済力より「家事の能力」が重要だ

でもやはり女性の学歴上昇婚以前に、最大の問題は、学歴を問わず男性が家事育児に非協力的なことなのでしょうね。先の調査で私がいちばん驚いたのは、女性が男性に求める条件で、「家事・育児能力」が96.4%「仕事への理解」が92.7%と、男性→女性よりも高い点です。しかも家事・育児能力では、「考慮」より重い「重視」の比率(62.4%)が、経済力(の重視42.0%)より高く、なんと人柄に次いで2位なのです!

人生の途中で、年収や学歴を大きく上昇させるのはかなり難しいことですが、それに比べれば、家事・育児について積極的な姿勢を持ち、スキルを身に付けるというのは、それほど難しいことではないはずです。独身男性のみなさん、ここは未開拓の巨大市場なんです!

あんまりお勉強の得意でない息子(小3)は、夕食づくりのお手伝いをとてもよくやってくれます。なのできちんと家事のスキルを仕込んで、フルタイムで働く女性を、しっかりサポートできる男性になってほしいと思っています。勉強と家事の両立、これも立派なワークライフバランスへのトレーニングです。

瀬地山 角 東京大学教授

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せちやま かく

1963年生まれ、奈良県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。北海道大学文学部助手などを経て、2008年より現職。専門はジェンダー論、主な著書に『お笑いジェンダー論』『東アジアの家父長制』(いずれも勁草書房)など。

「イクメン」という言葉などない頃から、職場の保育所に子ども2人を送り迎えし、夕食の支度も担当。専門は男女の社会的性差や差別を扱うジェンダー論という分野で、研究と実践の両立を標榜している。アメリカでは父娘家庭も経験した。

大学で開く講義は履修者が400人を超える人気講義。大学だけでなく、北海道から沖縄まで「子道具」を連れて講演をする「口から出稼ぎ」も仕事の一部。爆笑の起きる講演で人気がある。 
 

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