容姿や年齢にとらわれる「呪い」はもう要らない

小島慶子と犬山紙子が共働き共育てを語る

犬山:まさに♯MeToo運動と同じですね。うちの夫も、リスペクトしているミュージシャンの方が、子どもに毎日お弁当を作っているという話を聞いて、「俺も毎日作ってあげるんだ」と楽しみにしているんです。憧れの人がそういう姿を見せるって大事なんですよね。

小島:パパたちを盛り上げることも大事で、そこは女性の知恵の絞りどころです。男性全員を敵視しても意味がないんですよ。ここ数年で男性の育児参画、女性の活躍が進んだことに対して、バックラッシュ的な動きも起こりつつあって、「育休なんて言っているから国が沈むんだ」と声高に言ってやろうというモードが盛り上がる前に、「そんなのはトレンドではない。育児は男女にかかわらず当然のこと。こっちが常識ですよ」という態度で子育て世代が頑張らないといけません。

子育て世代だからこそ、できることとは?

犬山:一方で、ワーク・ライフ・バランスについて深刻な悩みを抱えている人もいます。本当は今の職場を辞めたいけれど、貯金もない、どうしたらいいんだという人もゴマンといます。その人たちに、「自分のことをもっと肯定して」というのは、現状ではすごく難しい。そこから自力では脱出できない人たちを、私たちの世代がどう引っ張っていくかは大きな課題です。

小島:子育て世代は、独身のときより世帯収入も増え、子どもを通じて世の中と自分たちの暮らしが地続きであることを実感している。職場や地域で発言する力も、若者よりもありますよね。子育て世代には世の中を変える力があるんです。社会を住みやすくするためにできることがあれば、少しでもいいからやることが大事。自分の子どもがどうやったら逃げ切れるかだけを考えていたら、最終的にわが子が出ていく社会は変わらないですし。

犬山:ただ1つつぶやくだけでも、いいんですよね。ニュースをシェアするだけでも、社会を育てる1つのステップです。

私は人の成功は8割運だと思っているので、自分はそこそこ恵まれていると思う人には、その「運」を社会に還元してほしいと思います。欧米では、セレブはチャリティをやらないとダサいという文化があって、私自身そう思います。なので、日本でも、「自分の運のよさを社会に還元しないのってダサくない?」という価値観が定着してほしいですね。

小島:今の20代の人は結構社会のことに関心が高いんです。30~40代の子育て世代にも「自分の子どものことしか考えていないのってダサい! ソーシャルなことに目が向いているのってかっこいい」という流れを作りたいですね。そうしないと子育ては家庭で完結してしまって、社会を変える力にできない。ちょっとしたつぶやきでもいいですから、世の中について発信したり考えたりすることは大事です。

イクメントレンドのアイコン的存在が声高に叫ぶよりも数百万人がSNSでぶつぶつ、ボソボソつぶやくほうが、断然力になるんです。この5年で子育てを取り巻く環境が大きく変わったのも、これに負うところが大きいと思います。

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犬山:「保育園落ちた日本死ね」やカネカの炎上事件もそうでしたね。意見を主張する人は「気が強くて面倒くさい人」というというラベリングは、以前より減りました。前は、フェミニズムの「フェ」というだけでも、「面倒くさい人」と認定されていたのが、今は「私、フェミニストです」と言えるようになっています。

主張することと、優しさや癒やしは、共存できると思うんです。主張する人は、「怖そう、面倒くさそう」ではなくて、優しさや癒やしも共存させたいなと考えながら、私もポジティブに発信しています。

小島:犬山さんをはじめとする、現役子育て世代を心から応援するし、これまでの常識を変える仲間として期待しています。

(構成:福本 千秋/ライター、本対談は2019年9月に実施しました)

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