物が捨てられない男性と即離婚した39歳女性 サランラップや洗剤をストックしまくる

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成婚退会をしてすぐに彼の家の鍵をもらい、「これからは自由に出入りして」と言われた。ある週末、彼が休日出勤している間に家に行き、部屋を少し片付けることにした。

まずは自分が主に使うこととなる、キッチンから片付けていこうと思った。

「キッチンの棚を開けて、びっくりしました。食器なんてほとんどないのに、棚の中は買いだめした洗剤、サランラップ、ティッシュでパンパンでした。そのほかにも顆粒のスポーツ飲料、カップ麺、1杯ずつドリップできるコーヒーなどがいっぱいありました。ペットボトルが入った段ボールも6箱くらい積み上がっていました」

これは消費して片付けていくしかないと思い、洗濯機の置いてあるバスルームに行ってみた。するとそこの棚にも、お風呂の浴槽洗剤、洗濯洗剤、柔軟剤、消臭剤、洗濯ネット、トイレットペーパーなどが、パンパンに詰まっていた。

その日、会社から帰って来た彼に言った。

「どうしてこんなに物を買いだめしているの? 昌吉さんは一人暮らしだし、こんなにストックしても使いきれないでしょう?」

すると彼が言った。

「ドラッグストアの前を通って安売りしているときに、買っておくんだよ。いつかは必ず使う物だし、備えあれば憂いなしだから」

買いだめして物をあふれさせていることに、何の疑問も持っていないようだった。そこで、真奈美が言った。

「でも、これからは1人じゃなくて2人の暮らしになるんだよ。棚という棚にあんなに物が入っていたら、私の荷物を入れるスペースがない。私が引っ越してくるまでに少し整理してほしいなあ。今度2人で、部屋を片付けようよ」

“思い出”という名の“ゴミ”に囲まれた生活

次の休みの日、真奈美は家の片付けを一緒にすることを提案した。買いだめされた洗剤などは捨てるわけにはいかないが、いらない物、使っていない物は処分したほうがいい。

そのときの様子を、真奈美は私にこう語った。

「3LDKの家なのですが、6畳の1部屋は物置になっていて、荷物でパンパンでした。薄汚れたサッカーボール、ガットが緩んだテニスラケット、傷だらけのスキー板もありました。『これ使うの?』と聞いたら、『使わないけど、高校や大学時代の思い出だからね』と平然とした顔で言うんですよ。当時着ていたと思われる流行遅れのセーターやジーンズやチノパンなんかも、全部捨てずに取ってありました」

さらに驚いたのは、ビニール袋の中から、黄ばんで字が見えなくなったレシート、ロープウェイなどの乗り物の半券、映画チケットの半券、旅行先でもらったと思われるパンフレットなどが出てきたことだ。

「私が捨てようとしたら、『あ~、捨てないで! 思い出の品だから』と。私には、ただのゴミにしか見えないものでも、彼には宝物なんです」

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