「ジョーカー」に見えたお笑い芸人の格差社会 なぜ無名芸人ほど残酷な扱いをされるのか?

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テレビの中で格上の芸人が格下の芸人を容赦なくイジり倒す。これは、日本のお笑い界でも一般的に見られる光景だ。『M-1グランプリ』などのコンテストで活躍したりしてチャンスをつかんだ若手芸人は、先輩芸人が仕切るバラエティー番組に出ると、まずは笑わせるのではなく笑われる立場になる。

それまでお笑いライブでどれだけ面白いネタをやったり、面白いトークをしたりしてきた実績のある芸人でも、テレビに出始めの頃は、誰にも知られていない無名の芸人にすぎない。そこに待ち受けているのは、芸歴も実力も知名度もはるかに上の先輩芸人ばかりだ。

売れない無名芸人の悲哀

先輩芸人は後輩芸人を容赦なくイジり倒し、笑いものにする。それは後輩芸人の面白さを引き出したいという愛情の表れでもあるのだが、表面上は「いじめ」のように見えることもある。

でも、これはある程度はやむをえないことなのだ。一般に顔と名前が知られていない芸人が、普段ライブでやっているように「皆さんおなじみの僕です」という感じで何らかのパフォーマンスを始めたとしても、多くの視聴者には興味を持たれないからだ。

もともとテレビに出ている芸人は、すでに十分な信用を得ている。だから何かを言ったときに素直に笑ってもらえる。その土壌がない若手芸人は、まずはドッキリ番組で落とし穴に落とされたり、トーク番組で先輩芸人にイジられたりして、笑いものになるしかない。

人を笑わせたいと思い、ライブで多くの観客を笑わせてきた芸人が、いざテレビに出るようになると、笑わせるのではなく笑われる側に回ることになる。これがお笑い界の現実だ。

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