「はったり」がないと世界では勝てない テレパシー・井口尊仁CEOと語る(上)

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「絶対に勝てっこない」くらいが“いいあんばい”

――グーグルとの競争、勝算は見えていますか?

井口:はなから勝算があったら面白くないじゃないですか。「井口さん勝つよね」と思われるより、「絶対、勝てっこない」くらいのほうが、挑戦者としてあんばいがいいですよ。

普通に考えたら、グーグルには勝てないでしょ。グーグル本社に行ったことがありますか? 広大な敷地にある30個近くのキャンパス(会社の建物)の中で、世界中の天才たちが死ぬ気で働いている。自動運転車、ドローン、コンタクトレンズといったロケットサイエンスを巨額なカネを使いながら開発している会社で、時価総額も36兆円を超えている。日本の一流企業を10社以上連れて行っても勝てない規模ですよ。だから、普通に勝てるとは思わないじゃないですか。絶対に無理、不可能。でも、それでいいんですよ。

伊佐山:それは大事ですよね。僕も10社を超える大企業から投資してもらいファンドをつくり、日本のベンチャーシーンを活性化させるという時点で、「大企業がベンチャーのことなんてやるわけがない」「調整に時間をとられるだけで何も起きないよ」という意見があがりました。これまでもやろうとした人は数多くいたし、今更なんで大変なことをやるんですか、とも聞かれるわけです。ただ僕も井口さんと同じで、それでいいかなと思っています。きっと、できたときに「オレも同じことを考えてたよ」と多くの人が言うと思うのですが、まだやりきった人がいない。ならば、挑戦しがいがある。「成功して当たり前」「成功が見えている」では面白くありませんよね。

井口:イーロン・マスクも、テスラモーターズを始めたとき、「誰もがまじめにやっていなかったから」と言っていました。電気自動車(EV)に取り組んでいる企業はあったものの、まじめに取り組んでおらず、GMやフォードなどのCEOは「うまくいきっこない」と断言していました。だから、イーロン・マスクはやったんだと思いますね。

米アップルのiPhoneも、発売された2007年には、インテルやノキアのCEOが「誰が使うんだ」と。当時は多くのビジネスマンがブラックベリーを使っていて、世界ではノキアが席巻している時代。アンテナもキーボードもないiPhoneが売れるのか――と誰もが思っていたと思います。でも、今やiPhoneは全世界中で使われている。

僕のテレパシーも同様です。今年中に必ず発売を開始して、2015年以降、世界展開をしていきます。iPhone以降7年経過しましたが、今やスマートフォンがない世界は想像できない。僕らはウエアラブル端末の先駆けですが、ファーストタッチで面白いことをして驚かすことは、どうでもいいと思っています。僕らは世界的なプラットフォームをつくり、ウエアラブル端末でできる人間と人間のつながり、そしてお互いの助け合い、分かち合いを本気でやりたいと思っています。

「Confidence makes things happen」(自信がすべてを可能にする)
私は、多くの日本人が持つ謙虚さは大好きだ。一方、最近、台頭目覚ましい、新興国のベンチャー起業家は、時に辟易とするほどの自信家だ。これは同僚だったアメリカ人のベンチャーキャピタリストも同じ感想を持っている。
世界で戦う――その意味で、日本人は“根拠なき自信”も持った、“謙虚なメガロマニア(誇大妄想癖)”になることが、自分を変え、社会を変え、世界を変えることにつながると考えている。
シリコンバレー流 世界最先端の働き方』(伊佐山元、KADOKAWA中経出版)P50参照

(構成:山本智之、撮影:今井康一)

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