「はったり」がないと世界では勝てない テレパシー・井口尊仁CEOと語る(上)

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「はったり」がないと世界で勝てない

伊佐山:これは、井口さんがシリコンバレーに本拠地を置き、グローバル目線で「どうやってポジションをとっていくか」という発想だから、できる術です。日本のベンチャーは、日本人にはメディアでは取り上げられて知られていても、外国人から知られていない企業が多い。

ベンチャーに必要なのは、いかに“はったり”をかましながら、競合を圧倒していくか――。正統派でなく、トリッキーですが、合理的ではない部分が必要なのです。壮大なビジョンやプランで“はったり”をかまして、周囲が「かなわないな」という雰囲気をつくり、マスコミに取り上げてもらい、さらに加速させる。そしておカネを集めて、人を集めるというのが、ベンチャーのCEOの大きな仕事だったりします。アメリカ人と勝負するには、多少の図太さがないと勝てません。社内では謙虚でいいと思いますが、戦いの最前線では強い気持ちで、夢を語り、周りを変えていくくらいの誇大妄想が必要です。

世界に出て成功するためには、まず“注目”されて、認知されなければならない。厳しい競争下で、いかに認知されるか――。日本人からすると、目立ってて嫌な感じだなと思われるかもしれませんが、「しょうがない」。雑誌などのメディアに出て格好つけていると言われても、認知されないと勝負にすらならないので、やっている本人からしたら死活問題なのです。

井口 尊仁(いぐち たかひと) テレパシー最高経営責任者(CEO) 
1963年岡山県生まれ。立命館大学文学部哲学科卒業。システムエンジニアなどを経て、96年ジャストシステム入社。マンガをデジタル化して発信する仕組みを開発。99年独立してデジタオを設立し、ブログやSNSなどのシステムを手掛ける。2008年「頓智ドット」を設立し、社長就任。拡張現実を実現するソフト「セカイカメラ」を発表して注目される。2013年「テレパシー」を創業し、CEOに就任。シリコンバレーに本拠地を置き、ウエアラブル端末「テレパシー・ワン」で世界規模の新しいコミュニケーション環境の実現を目指す。

井口:“はったり”がないと絶対に勝てないです。ベンチャー企業は、マーケットにポジションをつくること、ファイナンスをいいバリエーションで取りにいくこと、この2つがうまく回らないと、すばらしいメンバーを集められませんから。

シリコンバレーでは、極端な話、日本基準の倍、それ以上の金額を払わないと、いい人がこない。その一方で、「マーケットでオポチュニティのあるいいポジションをとっている」「それをレバレッジして、いいバリエーションで資金調達している」という裏付けがあれば、本当にすごい人が来たりする。グーグル・グラスをやっていた人やエックスボックスをやっていた人、ヤフーで何千万人が利用しているサービスを作った人が普通に来るんです。だから、“はったり”をかまさないとダメ。必要スキルですね。

伊佐山:日本の常識だと、モノが完成していないのにカンファレンスに出るなんて、不謹慎かもしれません。ただ、残念ながら、スタートアップは、きれいごとではおカネもヒトも集められない。自分の限界のボーダーラインまで“はったり”をかまさないとダメ。王道では、高い給料プラス、ストックオプションまで支払わなければならないと「いい人」は雇えない。それを克服するためにはひとつしか手段がなく、それは「今、参加すると、いいことありそう」という期待値を上げるしかないのです。

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