井口:世界的なカンファレンスである、サウス・バイ・サウスウエスト(アメリカ)で2013年3月にテレパシー・ワンを発表したときには、ビジネスインサイトやCNN、シーネットといった主要な海外メディアが「グーグル・グラスのライバルがついにきた!」と報じてくれました。
デモ用のテレパシー・ワンへの数百万円の投資で、800億円を投資しているグーグルを相手に、勢力で言うと99.9対0.01にもかかわらず、“比較対象”になった。ダビデとゴリアテですよ。象とありんこは、ありんこにとって有利なのです。
たとえば、その後のシリコンバレーフォーラムというカンファレンスでも、「グーグル・グラスは、デザインはダサいし、機能はてんこ盛りで使いにくいし、クソだ! その点、テレパシー・ワンは、シンプルで使い勝手がいい」というスピーチをしたら、ドッカーン、バカウケです(笑)。
アンチグーグルを味方にする戦略
伊佐山:井口さんがわかってやっているのは、すごい。グーグルを仮想敵にした瞬間に、比較対象になる。その時点で“勝ち”ですよね。
「グーグルを敵としている」「グーグルが敵とみなした」――こう言った瞬間にわかりやすいじゃないですか。テレパシーがグーグルの唯一の対抗馬だというブランディングができた時点で、マーケティング的には“大成功”です。井口さんが“かまして”勝ち取ったものは大きいですね(笑)。
世界中にグーグルファンがいる一方で、アンチグーグルもたくさんいる。グーグルをそこまでけなせる人は井口さんぐらいしかいないので、アンチグーグルの人たちを味方につけますよね。シリコンバレーフォーラムには、グーグル関係者も多く来ているので、彼らからしたら「ふざけるな」と思っているのでしょうが、ありんこが象と戦うには、それくらいの度胸がないと勝負になりません。
井口:ありがたいことに、今、シリコンバレーでウエアラブル端末の話をしたときに、必ずテレパシーの名前は出てきます。スタートアップ界隈はもちろんのこと、先日、シリコンバレーの有名なラーメン屋「俺ん家」で並んで待っていたら、前にいたまったく知らない人たちが「テレパシーってヤバいらしい」と話していた(笑)。さらに今、ニューヨークでも、「テレパシーのアプリを作りたい」というスタートアップも出てきています。
また、テレパシーがグーグルの敵になったことで、「技術」も向こうからやって来る。グーグルに採用されなかったデバイスメーカーやモジュールメーカーが行列をなして来ます。グーグルの敵は全部テレパシーの味方なんですよ。
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