「大企業×ベンチャー」で日本は変わる! クオンタムリープCEO・出井伸之氏と語る(上)

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 本連載の著者である伊佐山元氏が創業したWiLは2013年末、ソニー、日産自動車など10社を超える大手企業から3億ドル(約300億円)の出資を受け、ベンチャー投資ファンド「WiL1号ファンド」を組成した。同ファンドは、出資先企業の技術を活用したベンチャーのインキュベーションやスマートフォンやビッグデータなどITを活用し、自動車、家電、電子商取引(EC)などの新製品・サービスの開発につながる新技術をもつベンチャーに投資する。2012年度の日本のベンチャー投資額は1026億円で、その約3割に相当する規模のファンド組成は、ベンチャー業界から大きな注目を浴びた。
 今回の対談は、以前から「大企業×ベンチャーの可能性」を言及している元ソニー最高経営責任者(CEO)でクオンタムリープ代表取締役ファウンダー&CEOを務める出井伸之氏。「日本の大企業とベンチャー企業が組むことの意味」について語っていただく。

なぜ、大企業とベンチャーの“かけ算”を目指すのか?

伊佐山元(以下、伊佐山):出井さんとの出会いは、ソニーのトップを退かれてクオンタムリープを起ち上げられた直後の7~8年前。クオンタムリープの勉強会の講師に呼ばれて、意見交換して以来、定期的にお会いし、お付き合いさせていただいています。

最近になり出井さんは「コーポレート・ベンチャリングアウト」という新しいコンセプトを提唱され、大企業の社内ベンチャー制度を外部の専門部隊にアウトソースでできないかということを模索していた。つまり、大企業内では、ベンチャーを自由に手掛けることは仕組みとして難しいので、信頼できる外部に、いったん、委託する発想だ。それは私の構想である「大企業のリソースをどうやってベンチャーに結び付けるのか」と似た考えで、今回の「WiL1号ファンド」に関しても応援していただきました。

出井伸之(以下、出井):僕が大企業とベンチャーのかけ算が必要だと提唱してきたのは、日本の“次”の産業構造を創出するという、日本経済を見通した話です。そのためには、大企業を変換させなければならない。なぜ、大企業か――。それは、日本の大企業の中には、シリコンバレーでもすぐに食いつきたくなるような“ネタ”が転がっているから。つまり、大企業には、ものすごい「資産」が眠っているにもかかわらず、生かしきれていない。

僕は大企業出身だから、大企業の中にどれだけ資産があるか、経験的にわかっている。それを“切り出して、ベンチャーと組み合わせられればいい”というのがもともとの発想です。大企業が資産を生かしきれていない理由は、ベンチャーにとっては宝でも、大企業にとっては100億円規模にしか成長が見込めないビジネスは小さく見えるという相対性の問題や、R&D(研究開発)部門にあるうちはコストとしてしか見ていないという実務上の問題もあるだろう。しかし、企業はつねに変化していかなければいけないものだ。大企業にとって、本業のチャレンジも必要だが、新しい種を生んでいくことが必要だ。

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