日本に“仕組み”ではなく、新たな“風”を
出井:現在の日本は、「カウントダウンが始まっている」状況。2007年に出版した『日本進化論』では、フランスのドゴール元大統領の「適度に楽観的であれ」という言葉を引用したが、今は決して楽観視できない。アベノミクスになってから景気回復だと騒がれているが、日本の成長戦略は見えないままだ。
だからこそ、「大企業の変革」、そして「ベンチャーの目線を上げさせること」も必要だ。僕は現在、クオンタムリープの代表取締役ファウンダー&CEOとして、十数社を支援している。たとえば、電気自動車のグリーンロードモータースやテラモーターズ、SNSのイオレ、それからアジアイノベーションフォーラムの開催などだ。僕は、メーカー出身だから目線が長く、そして、世界を見ている。電気自動車のバッテリーやモーターがダメだというのは、わかっているが、5年待てば次が出てくる。次のジェネレーションに期待するという視点が必要だ。
伊佐山:現在、さまざまな政府のベンチャー関連の委員会などにも参加しているのですが、これまでの日本のベンチャーシーンへのアプローチは、「制度を変えましょう」「特区をつくりましょう」「ファンドをたくさん作りましょう」という“仕組み”に関するものが多い印象です。
ただ、それではうまくいかないのではないか――という気がします。なぜなら、たとえば、1990年代以降に設立された日本企業で時価総額1兆円を超えた企業は、楽天の1社だけだからです。
一方、米国カリフォルニア州のすごい小さな地域であるシリコンバレーには、グーグルの時価総額は36兆円、フェイスブックも20兆円近く、最近のテスラモーターズですら1兆円規模を超え、そうした時価総額1兆円超えの企業が続々と出ている。アメリカ経済のGDPに与えたインパクトも大きい。つまり、“仕組み”だけではない、何かが必要だと思うのです。
WiLみたいなプロジェクトは、万人受けするわけではないけれど、できることはたくさんあると思っています。出井さんがおっしゃるように、成功例がひとつふたつ出れば、一気に流れが変わる。だから、僕の最大のミッションは、これがベンチャーシーンにおけるひとつの新しいモデルだということを証明するよう、成果を出すことだと思っています。今は、ファンドを組成したという「ベイビーステップ」の段階ですが、日本のベンチャーシーン、日本経済の活性化に貢献できるように、しっかり進化していかなければいけないと思っています。
出井:カウントダウンが始まっている日本を変えるという意味でも、「大企業とベンチャーを結び付ける」伊佐山さんの取り組みは成功してほしい。そのために、これからも応援するよ(笑)。
(構成:山本 智之 撮影:梅谷 秀司)
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