出井:だからこそ、シリコンバレーのダイナミズムが日本でできたら、日本も変わると思う。シリコンバレーを見ると、ベンチャー企業の“出口”は上場ではなく、大企業からのM&A(企業の合併・買収)が圧倒的に多い。それは裏を返せば、それほど大企業がベンチャーに着目し、研究していることでもある。米グーグルが2013年12月に買収したSCHAFT(シャフト)などはいい例だろう。
SCHAFTは東京大学OBの中西雄飛氏が創業した、災害現場でヒューマノイド型ロボットを開発している会社。僕も面倒をみたけど、日本の投資家からはどこに行っても「売り上げを出してから投資を検討しますね」と言われてきた。金融投資家にとっては“おカネにならない”から投資が難しいのは理解できる。ただ、事業会社にとっては、ゼロからロボット事業を立ち上げるよりも、技術と人材を獲得できるという観点から考えれば、時間とヒトを買うチャンスになったのではないか。古い考えかもしれないが、日本の大企業が早く判断すれば、技術流出しなかったかもしれない。
伊佐山:シリコンバレーでは、ベンチャーはR&Dの一部を代替する存在です。だから、M&Aが多い。ただ、それは企業風土の問題もあるかもしれません。すべて自分たちで研究開発するか、半分を自分たちで半分をM&Aでするか――というのは、ビジネスジャッジメントの話だからです。
とはいえ、日本の大企業は「内製主義」が強い。これまで日本でもさんざん、「オープンイノベーションが必要だ」ということが、学者をはじめ多くの人から言われてきました。にもかかわらず、現実的には「できていない」という印象が強い。
大企業が組みベンチャー投資するインパクトとは
伊佐山:今回の「WiLファンド1号」は、ソニー、日産自動車、ANAホールディングス、NTTグループ、三越伊勢丹ホールディングス、博報堂DYグループ、大和証券グループ本社、JVCケンウッド、ベネッセホールディングス、産業革新機構から出資してもらいました。
大企業がファンドを組成することやファンドに出資することは珍しいことではありません。しかし、WiLでは、10社を超える幅広い業種の日本を代表する事業会社に出資いただいたこと、「カネ」だけでなく「ヒト」も「モノ」も出してもらうこと、という前例のない新しい取り組みをします。
10社を超える大企業、それも日本を代表する企業からバランスよく出資いただいたことで、これまでなかった「業種を超えたコラボレート」による化学反応の可能性も高まります。支援いただく企業には、1社だけではできなかったこと、自分たちだけではできなかったことを「可能にする場」にできればと思っています。
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