子どもは大人に搾取されています。つまり、大人の夢・目的・欲のために搾取されて犠牲になっている子どもがたくさんいるのです。
大人とは親と先生をはじめとするすべての大人です。「子どものため」と言いつつ、実は大人の自己実現のためであることが非常に多いというのが現実です。でも、それに気づいている大人はほとんどいません。いくつか実例を挙げます。
塾講師が課せられた「ノルマ」
1つ目は、「進学塾が子どもを搾取している」例です。これは、私がある雑誌の企画で対談した福田さん(仮名)という女性に聞いた話です。福田さんは以前10年間ほど、中学受験専門の塾の講師をしていたのですが、精神状態が悪くなり退職しました。いちばん苦痛だったのが講師に課せられた「夏休み特訓セミナーに自分が教えている子どもの中から5人参加させる」などのノルマでした。
講師たちには各塾生の実力はよくわかっているので、「この子はこの特訓セミナーを受けても志望校に合格するのは無理だな」という場合も多いのです。でも、それがわかっていても、ノルマを達成するためには勧誘しなければなりません。
子どもの親に「夏休みのうちにあと1段階レベルアップしておけば、志望校も射程圏に入ります。そのためにはこの特訓セミナーがお薦めです」などと言って、数万円のセミナーに勧誘しなければならないのです。
要するに、言葉巧みうそにをついて勧誘しているわけで、福田さんにはこれが非常に苦痛でした。そして、うまく勧誘できて子どもが特訓セミナーに参加しても、その子が勉強についてこれなくなることがよくありました。その様子を見るのもまた大きな苦痛でした。こういうことが度重なり、福田さんは良心の呵責に耐えかねて退職したのです。このように、進学塾が子どもを搾取している例は少なくありません。
2つ目は「親が子どもを搾取している」例です。これは、首都圏で子育て中の藤井さん(仮名)の話です。藤井さんは小学4年生の息子の鬱病的な症状で悩んでいて、心療内科で診てもらいました。すると、嫌々やらせられているピアノ教室とサッカー教室が原因だと指摘されたのです。
ピアノを始めたのは、母親である藤井さんの意向によるものです。藤井さんは、自分が子どもの頃ピアノを習いたかったけど習わせてもらえませんでした。人前でカッコよくピアノを弾く友達のことをうらやましく思っていました。それで、子どもができたら絶対ピアノを習わせたいとずっと思っていて、3歳のときから息子をピアノ教室に通わせ始めたのです。
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