このような“努力”のおかげで、公開授業では子どもたちがたくさん発表できました。でも、貴重な授業時間を10時間も余分に使ってしまった弊害はあちらこちらに出ました。算数では、「382÷25」などの割り算の筆算を練習する時間を減らさざるをえませんでした。これは小学生にとって最難関の勉強の1つなのですが、十分な時間をかけられなくなってしまったのです。
それを補うためということで、プリントの宿題を増やしました。ほかにも図工と音楽の授業を減らしましたし、漢字の練習もすべて宿題に回しました。このように、学校では、教師の勝手な都合のために子どもたちの貴重な時間とエネルギーが費やされることが非常によくあります。
もう1つ、学校の教師の話です。東京都の中学校教師・佐々木先生(仮名)は、合唱指導で全国的に有名です。佐々木先生が指導した中学校は、これまで大きなコンクールで何度も優勝してきました。
ところが、当の中学生や保護者の間では、佐々木先生の評判はあまりよくありません。というのも、指導がすごく厳しくて、しかも長時間にわたるからです。佐々木先生が指導した生徒たちは、みんな歌が嫌いになるという噂もあるくらいです。
子どもが歌を嫌いになってしまうようでは、たとえコンクールで優勝しても意味はありません。でも、教師が自分の名誉を優先してしまうと、子どもを犠牲にしても優勝を目指すようになってしまうのです。
また、コンクールを目指さないまでも、中学校ではクラス作りの一環として合唱指導がよく行われています。そこで、教師が「指導力がある先生」という評価を得たいがために、出来栄えや見栄えを重視してしまうと、同じようなことが起こります。
さらに言えば、絵画指導が得意な先生のクラスの子どもたちは絵が嫌いになる、算数指導が得意な先生のクラスの子どもたちは算数が嫌いになる、体育指導が得意な先生のクラスの子どもたちは体育が嫌いになる、などのことが実際によく起こります。これらはすべて前述と同じような理由でそうなるのです。先生たちは十分気をつける必要があります。
スポーツ指導でも“搾取”は多い
4つ目は、スポーツや習い事の指導者が子どもを搾取している話です。私が何度か目にしているのは、スポーツ少年団の監督やコーチが、大会でよい結果を得たいがために子どもに無理な練習をさせたり、罵詈雑言を浴びせたりする例です。野球の試合で三振やエラーをした子に「何やってんだ。やめちまえ」などと怒鳴る監督やコーチはいまだにいます。
以上、いろいろな例を挙げましたが、こういった搾取は日々ありとあらゆるところで、ありとあらゆる瞬間に起こっています。ですから、子どもを犠牲にしないために、すべての大人たちは、「子どものためと言いつつ、実は自分のためなのではないか?」と自問し続けることが必要です。そして、本当に子どものためになる行動をしてほしいと思います。
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