その後、イギリスでもルネッサンス文化が栄えてくると、今度はたくさんのラテン語やギリシャ語が借用されます。新しい単語が入ってくると、そちらに置き換えられて古い単語は廃れていくというケースもありましたが、少しずつ意味を変えて残ったものもありました。
同じ意味を表していた単語を語源別に並べてみるとちょっと面白いです。こちらもよく挙げられる例ですが、
― | 古英語 | フランス系借用語 | ラテン系借用語 |
尋ねる | ask | question | interrogate |
時間 | time | age | epoch |
ゲルマン系の古英語の単語は平易で短く、ある意味粗野な響きもありますが、反面温かさや親近感が感じられます。フランス系の単語は、古英語よりも洗練された感じではありますが、現代としては割と中立的な響きの単語として残っているものが多く、ラテン系の単語は知的で堅苦しい印象の響きとなっています。
日本語でも、もともとの和語に漢語が入って、さらには英語など欧米の言葉からの外来語が入ってきて、同じようなことになっています。例えば、市場(いちば)が和語、市場(しじょう)が漢語、マーケットが外来語です。すべて同じ意味を表しますが、響きが違いますよね。
fallという単語が、「秋」の意味ではほぼ死語となってしまったイギリスでは、ほかの季節はすべてゲルマン系の古英語の単語が残っているのに、秋だけフランス系の単語になってしまったというのも面白いですね。fallの語源はアングロサクソン語のfeallanですので、アメリカのようにfallが主流になっていれば、季節を表す単語がすべてゲルマン系になって、情緒豊かなゲルマン系の響きで統一感があったのですけれどね……。
それでは、ついでに「秋」以外の季節、「春」「夏」「冬」の語源についても、一緒に見てみましょう。
ほかの季節の語源は?
その昔、アングロサクソン人には四季という概念はなかったようで、年月を数えるのに「冬」という期間を基準にしていたようです。作物が育たぬ厳しい季節がめぐってくる間隔で、時の経過を計っていたのかもしれませんね。
winterという単語は、ゲルマン系のwintruz(冬)という単語が起源のようです。さらにその起源は、印欧祖語のwed-(濡れた、水の)という語形のようです。「冷たい季節」という感じでとらえたのでしょうか。wetやwater、washなど、水に関わる単語はみんなwinterの親戚みたいなものなのですね。
その後、「冬」と対比される季節として「夏」という概念ができたと考えられているようです。summerの語源は古英語のsumor(夏)ですが、その起源をたどっていくとサンスクリット語のsama(半年)という単語と同族語であるようです。
つまり、「冬」を基準にして「もう片方の季節」という感じで名付けられたのかもしれません。イギリスの夏が「暑くてつらい季節」だったら、もう少し存在感のある名前が付いていたかもしれませんね。
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