「春」は古英語ではlenctenと呼ばれていました。その後、lenten、lentと変わっていったようですが、たどって行くとlong(長い)という単語とも関係しているようで、-tenの部分は「日」という意味を表しているという説もあるようです。「春」は「日が長くなる季節」というところから、このように呼ばれたのかもしれません。
後にlentというのはキリスト教の四旬節を表すようになりました。これはAsh Wednesday (灰の水曜日)から、Easter (復活祭)の前日、Holy Saturday(聖土曜日)までの期間で、断食や食事の節制などが行われます。年によって日にちが変わりますが、2月初旬~3月初旬のどこかの水曜日に始まって、46日間続く期間を指しています。
ところが14世紀になると「春」という季節を表すのにspringing timeという表現が現れます。これはspring(跳びはねる)という意味からもわかるように、地中から草木の芽が勢いよく飛び出すさまを表しているようです。「芽吹きの季節」という感じですね。
springには「泉」という意味もありますが、これも水が湧き出しているところからきているようですね。springing timeはやがてspringと略して使われるようになったとのことです。
同時期には、ラテン語系のver(緑)という表現や古フランス語のprimetemps(新しい時)など、いろいろな表現が入ってきたようなのですが、17世紀頃までにはspringが定着したようです。
整理して見ると、spring(春:芽吹きの季節)、summer(夏:冬とは反対側の季節)、autumn(秋:実りの季節)またはfall(秋:落ち葉の季節)、winter(冬:冷たい季節)という感じがそれぞれの語源の表す意味だったようですね。
fallを逆輸入?
現在、日本にはサマータイムという制度はありませんが、皆さんはこの制度のことを聞いたことがありますか。イギリスではSummer Time(British Summer Time)、アメリカではDaylight Saving Timeと呼ばれています。これは夏の時期だけ標準時よりも時計を1時間進めて、太陽が出ている時間を有効に使うための制度です。
実は、日本でも連合軍占領下の時代、1948(昭和23)年から1951(昭和26)年までの間は実施されていたそうです。当時は「サマータイム」ではなく、「サンマータイム」と呼ばれていたのだとか。ちょっとマヌケな響きですが、なんだか癒やされます。
アメリカでは3月の第2日曜日から11月の第1日曜日まで、イギリスでは3月の最終日曜日から10月の最終日曜日までが夏時間の対象となります。筆者はイギリスやアメリカに住んでいたときに、なかなかこの制度に慣れずに、夏時間の切り替え時に時計を調整するのを忘れてしまったことがよくありました。
アメリカではこの切り替えのときの時計の動かし方で混乱しないようにSpring forward, fall back(春は進めて、秋は戻して)というフレーズがあります。これを覚えておけば、夏時間が始まるときには1時間進め、終わったときには1時間戻すというのが即座にわかりますね。制度自体を忘れてしまうような筆者には無用の長物ですが……。
なぜ、突然サマータイムの話をしたのかというと、アメリカで生まれたSpring forward, fall backというフレーズ、1970年代後半辺りからイギリスでも使われるようになったようなのです。
そして、皆さんお気づきのように、これにはfall(秋)というイギリスでは廃れてしまった単語が含まれています。1度はアメリカに輸出をしてから廃れた単語が、数百年の時を経て再びイギリスに逆輸入されたというのは、ちょっと面白いですね。
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