「MBAで学んでも結果が出ない人」の残念な理由 コンセプトが使いこなせない3つのパターン

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あるいは、バリューチェーン分析も非常に有効でいろいろな使い方ができるツールですが、理解の浅い人は、単に機能を順に並べた図だけを描いて終わってしまいます。何も知らないよりはましかもしれませんが。これではやはりせっかくのフレームワークも効果を発揮できません。

こうしたパターンに陥らないためには、できれば原著を含む関連書籍を複数読んで立体的に理解を深める。あるいは独学ではなくしっかり理解している人から学ぶなどが有効となります。

パターン②:アップデートしていない

②のタイプも最近増えてきました。その最大の原因はITの進化です。例えばオーソドックスなターゲット・マーケティングのプロセスは今も有効な反面、IoTやAIの進化によって一人ひとりの顧客にカスタマイズしたマーケティングができるようになるにつれ、例えばセグメンテーションの方法なども見直すことが必要になってきています。

こうした部分をアップデートしていかないと、どれだけ基本のコンセプトやフレームワークを知っていても、時には害悪になってしまうのです。

パターン③:MBAコンセプトの「ダークサイド」を理解していない

③は、MBAコンセプトの裏の側面とも言うべき、落とし穴を知らなかったというものです。実は、これはMBAで学んだ人でもよく陥るパターンであり、実務で痛い目に遭って初めてそれに気がつくということも少なくありません。

例えば近年注目を浴びているKPI (重要業績評価指標)にROIC(投下資本利益率。ROCE=使用資本利益率と同じ値となる)というものがあります。NOPAT(税引後営業利益)すなわちEBIT(支払金利前税引前利益)×(1-t<実効税率>)を過去の正味累積投資額(=使用資本)で割った値です。

これがWACC(加重平均資本コスト)を超えれば企業価値が上がるということで、経営者はもちろん、株主をはじめとする資金提供者からしても大事な指標です。

当然企業はROICを上げようとするのですが、下手なやり方をすればかえって企業価値を削ぐことにもなりかねません。

なぜかと言えば、ROICは非常によい指標ではあるのですが、しょせんは単年度の指標であり、中長期的な視点を持ちにくい側面があるからです。極端に言えば、将来の競争力強化に必要な投資をサボり、分母を下げればその年の見た目のROICは上がってしまいます。

裏側を知らずにリアルで勝つことはできない

また、現場の人間にはややわかりにくいという問題もあります。その気になれば事業部ごとに設定できるのがROICのいいところなのですが、多くの多角化企業においては、どの事業部がどれだけ資産を用いているのかを正確に割り当てることは簡単ではなく、往々にして不公平感を生じさせることにもつながるのです。

ハードルレートとなるWACCも、事業部ごとに正確に設定するのはかなり難しい(そもそもWACCの概念を現場に説明するのが難しいという面もあります)。ちなみに筆者自身は大学院でこうした落とし穴については丁寧に教えていますが、世の中のMBA取得者がそれを正しく理解しているというわけではありません。

こうした裏の側面は、あらゆる経営コンセプトにつきものです。よい側面しかないコンセプトはないと断言してもいいでしょう。そうした裏の側面=ダークサイドを正しく理解しておくことが、MBAコンセプトの実務面での効果を上げるのです。

嶋田 毅 グロービス経営大学院教授、グロービス出版局長

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しまだ つよし / Tsuyoshi Shimada

グロービス経営大学院教員、グロービス出版局長。東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計160万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。著書に『MBA 100の基本』『ビジネスで使える数学の基本が1冊でざっくりわかる本』『KPI大全』(以上東洋経済新報社)、『グロービスMBAミドルマネジメント』(ダイヤモンド社)など。経営戦略、テクノベート・ストラテジー、研究プロジェクトなどの講師を務めるほか、各所で講演なども行っている。

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