だが、クラスも席も成績順の日能研の場合、子ども同士でもお互いの成績がある程度はわかる。後から入塾した穂花ちゃんに成績を抜かされたのが気に入らなかったのか、穂花ちゃんへの攻撃が塾でも学校のクラスでも始まっていくことになる。
ある日のこと、その独裁女子がやっていた行動をまねした低学年の子が、学校の備品を壊してしまった。もちろん、その場に独裁女子は取り巻きを従えていたのだが、「この子が勝手に壊した」と言い張ると、見ていた同級生男子から「お前もやってたじゃないか」と声が上がった。
そう言ったのは男子だったにもかかわらず、怒りの矛先はなぜか、男子の後ろに立っていた穂花ちゃんに向けられた。
人間関係に疲れ心理カウンセリングに通うように
始まったのは5年生のときと同様の無視攻撃。給食の配膳の列に並んでも、穂花ちゃんだけ給食を配ってもらえない。遠足では「女子みんなでお弁当を食べよう」と独裁女子が呼びかけて招集、穂花ちゃんだけは輪に入れてもらえずに、1人でお弁当を食べることになった。
家庭科や理科の実験など、グループで進めるワークのときにも穂花ちゃんにはいっさい作業をさせないという徹底ぶり。独裁女子がクラスの子たちに「無視するように」とお触れを出していたのか、まるでその場に存在しないかのような扱いを受け続けた。
しつこくいじめを続けるグループの子から、ある日穂花ちゃんの携帯にLINEが入る。「わたしの悪口言ったでしょ」。発見した多恵さんは、思わずこのLINEに返事をした。
「穂花の母です。〇〇ちゃん、穂花は今、疲れて寝ています。〇〇ちゃんは穂花のことよく知ってるよね。穂花、悪口を言うような子かな?」。返ってきたのは「あ、ごめんなさい」というコメント。「おばさんでよかったら相談にのるから、何かつらいことがあるなら話してね」。そうコメントして返信すると、こうした類のLINEはこなくなった。
こんなことをすれば、また「すぐチクる」と娘が陰口をたたかれるかもしれないと思いつつ、多恵さんは人間関係に疲れていく娘を前に、口を出さずにはいられなかった。眠れない日も続き、親子は心理カウンセリングにも通い始めた。
多恵さんは絶えず娘を励まし続けた。「出る杭は打たれるなら、打てないくらい出っ張ってやったらいい」。いじめをバネに大人になってきた有名人の話を伝えるなど、穂花ちゃんが自信を失わないように努めたと振り返る。
受験シーズンは冬のため、風邪を引かないようにとマスクをつける子も増える。だが穂花ちゃんがすると、それすらも悪口のネタとなった。
「マスクして気持ちわる」
「あいつすぐお母さんに言うよね」
中休みも遊ぶ相手はいなくなり、下の学年の子どもたちと遊ぶように。その後、この独裁女子の暴走は学校のクラスだけでなく塾でも止まらなくなっていく。
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