塾の授業中にもかかわらず、隣や後ろの席の子と大きな声で話す始末。講師が話をしている言葉を遮り授業を妨害することも毎回のように起こっていた。
この状況に他の保護者からも苦情が上がり、塾としては異例のことだが、講師2人体制で授業が進められることになった。塾側には弱みもある。傍若無人な生徒であろうとも、塾にとっては高額な月謝を払ってくれるお客様だ。とくに大手の塾の場合、生徒側から「辞めたい」と言うか、その校舎の責任者がよほど確固たる信念を持って運営していない限り、問題を起こす生徒でも退塾させることはまずない。
これら一連のことが起こっていたのは6年生の秋から冬にかけてのこと。この時期は、夏休みの猛勉強で夢の第1志望に「手が届く!」と自信をつける生徒がいる一方で、成績の伸び悩みから諦めの気持ちとともに、成績に見合った現実的な学校へと志望校を変えなければならない時期。
親から「なんでできないの!」と責められる子もいれば、親の希望で「やらされている」と感じている子どもからしてみれば、希望の押し付けと自分の実力に差を感じ、嫌気がさすこともある。
それぞれに状況はあるものの、子どもたちの心にストレスがかかることは間違いない。そのはけ口としてスケープゴート的に「いじめ」が起こる場合がある。そして、その苛立ちは学校の先生に向く場合もあれば、同級生に向くケースとさまざまだ。
「お母さん、私、もう疲れちゃった。学校も塾も行きたくない」
休んだら負けだと頑張っていた穂花ちゃんだったが、ついに登校拒否となり、塾も学校も行かなくなった。だが、受験勉強はやめていない。彼女の心を支えたのは受験して、あの子たちとは違う学校に入るんだという気持ちと、いつでもそばで支えてくれている母親、多恵さんの存在だろう。
入塾当初から続けていた家庭教師を続行、受験直前には偏差値も50台に乗り、まずまずの状況となっていく。
陰湿女子に振り回された子が出したまさかの決断
これだけ女子特有の陰湿ないじめに振り回された穂花ちゃんだが、第1志望として最終的に決めたのはまさかの女子校だった。それは、すでに受験を終えていた近所に住む仲良しのお姉さんからのアドバイスだった。
「穂花ちゃんがいつもいざこざに巻き込まれるときは、必ず男子のこと絡みだよね。女子校なら男子がいないから、そもそもそんな好きだのなんだののいざこざに巻きこまれることもないし、女子校のほうがサバサバしていて気楽だよ」
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