少子化と言われながら、年々加熱する中学受験。首都圏それも都心に暮らす親にとって、中学受験と無縁という人のほうが珍しいのではないだろうか。
だが、その“リアル”を知る機会は少ない。受験雑誌をにぎわせるのは成功者の話ばかり。しかし家庭によっては文字どおり、茨の道であることも少なくない。中学受験をするかしないかは別として、受験をすると決めた家にとってはその道がどのようなものなのか、困難な状況も知ることは大事だろう。そして、“困難さ”にはさまざまな種類が存在する。
夏、受験業界に詳しいある識者から「わけあり受験の子が増えている」と聞いた数日後、この連載宛てに届いたあるメールに目が留まった。そこに書かれていたのはまさに“わけあり”の親子の話だった。
都内で暮らす中学1年生の柴田穂花ちゃん(仮名)。現在は好きな芸術系の科目が充実する女子校に通い、生き生きと暮らしている彼女だが、小学校時代は同級生のストレスのはけ口にされてしまった1人だった。
直接手渡された、陰湿な手紙
柴田さん親子の暮らす私鉄沿線沿いにあるこのエリアは、少子化と言われる昨今でも子育て世代からの人気が高く、小学校は満杯状態。穂花ちゃんの学年も4クラスと生徒数は多めと言える。
公立中高一貫校を含め、クラスの半分くらいがなにかしらの形で中学受験をする状況に、地元出身の母親である多恵さん(仮名)は驚いていると話す。
「私の時代は地元の中学に行くのが普通でしたけど、変わったなぁという印象です」。高学年になっても特段受験は考えずにいたという柴田家だが、ある事件をきっかけに、中学受験の道を選択することを決めた。
日頃から男女分け隔てなく交友関係が広かった穂花ちゃん。意見もはっきりと言うタイプで、男子ともよく遊んでいた。だがこの活発さがあだとなったのか、あるとき、クラスのリーダー的存在の女子に目をつけられてしまった。
理由は単純なものだった。その子が好きな男児生徒と穂花ちゃんが仲良くしていたのを見てムカつかれてしまったのだ。5年生の11月、「ちょっと来てくれる?」とクラスの女子2人が穂花ちゃんを呼び出した。連れていかれた先は女子トイレだった。なぜ呼び出されたのかわからずに立ち尽くす穂花ちゃんが手渡されたのがこんな手紙だった。
穂花って頭悪いよね。しかもウザい。
ブスが! もう、みんなにもきらわれるよ。」
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