(第21回)現状を打破する変革人材の採用・育成のすすめ(中編)

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(第21回)現状を打破する変革人材の採用・育成のすすめ(中編)

福井信英

●変革人材の具体例・特徴

 前回のコラムでは、「経営環境にかかわらず、利益を生み出す仕組みを創り上げることができる人材」を『変革人材』と定義し、彼らを採用していくことの必要性を述べた。
 読者の中には、変革人材の人材像に関して、まだ具体的にイメージできない方もいるだろう。この場を借りて、私が出会ってきた変革人材の具体例を紹介したい。

【社会人8年目Aさんの事例】

 Aさんは8年目の社会人。積み重ねてきた努力と能力、そして理解ある上司に恵まれたこともあり、30代前半にして、売上高10億円規模の会社の取締役となっている。少し前まではある上場企業の社外取締役としても、その能力を余すところなく発揮していた。 経営者である父の影響もあってか、学生時代からビジネスに興味・関心が高く、学生時代にはアルバイト先のNo.1営業として活躍した。
 そんなAさんは、ビジネスに関してのスキルを高めるべく、就職活動を通じ縁のあった、とあるコンサルティング会社に入社を決意した。

 通常、コンサルティング会社に入ると、上司・先輩のアシスタントとして調査・分析業務に従事し、知識・見識を高めていくものだが、Aさんはなんと先輩のサポート業務を拒否。持ち前の営業力を活かして、自らアポを取り、顧客のもとを訪れるという破天荒な行動に出る。
 新人コンサルタントが顧客のもとを訪問しても、経営の相談などしてくれるわけがない。その点を十分理解していたAさんは、ある部署で開発された、小売店向けのパッケージシステムの販売を開始した。

 パッケージシステムゆえに単価が低く、経験不足もあり、社内での初年度の成績は中の下程度。決して高いものではなかった。しかし、学生時代の営業経験から、「自分の顧客を持たなければダメだ」と感じていたAさんの戦略・行動は2年目以降、徐々に花が開き、リピートのオーダーにより、3年目には事業部のエースとなるまでに至った。

 しかし、Aさんの成長は止まらない。パッケージシステムを1人で(あるいは社内の人間だけで)売ることに限界を感じていた彼は、5年目に大手ビールメーカー複数社と提携を結ぶことに成功する。ビールメーカーの営業先とパッケージシステムの販売先はともに飲食店だ。パッケージシステムの導入により店の売上が上がるということは、ビールの消費量も増えるということなので、システムはビールメーカーの営業がみずからのメリットとして販売してくれる。
 結果として、Aさん自身が営業活動をしなくても、システムを販売する構造を創り上げることに成功し、その功績により今は取締役へと昇進した。

 Aさんはひとつの事例に過ぎない。しかし、Aさんは変革人材が保有する多くの特徴を備えている。
 その特徴とは何か。洗い出してみよう。
行動・選択に常に明確な意図がある(目的意識)
→ビジネスに関する知識・見識を高めるためにコンサルティング会社に入社
所属する組織での突出した成果(行動力)
→学生時代のアルバイト先でのNo.1営業としての実績
既存のやり方にとらわれず、自分の能力が最大限発揮される方法・環境を選ぶ(自己理解、環境選択)
→先輩のサポートを拒否。自ら販売に動く
短期的な成果ではなく、中長期的に成果を最大化することを意識している(長期的視点)
→初年度の成績を上げることではなく、自分の顧客を得ることにフォーカス
個人の成果ではなく、「仕組み」による成果を実現することを志向している(戦略思考)
→ビールメーカーとの提携
 全員に共通するわけではないが、「変革人材」の多くはこのような特徴を備えている。
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