(第21回)現状を打破する変革人材の採用・育成のすすめ(中編)

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●変革人材はどれくらいいるのか

 「変革人材が素晴らしいのはわかる。しかし、変革人材と出会えることは極めて稀ではないか」

 そういう声を聞く。
 私の感覚では、上記のような人材は多く見積もって30人に1人、少なくても100人に1人程度はいるのではないかと考えている。
 中学でも、高校でも、大学でも、クラスに必ず1人は「目立つヤツ」「できるヤツ」がいたはずだ。彼らが変革の資質を持つ、「変革人材」の候補者だ。
 そんなにいるのであれば、我が社にも1人ぐらい入社してもいいのではないか。そう考える経営者・人事の方もいらっしゃることだろう。しかしそれは主に二つの理由から実現が難しくなっている。

理由・その一)
 変革人材は、総合商社やグローバル・メーカー、コンサルティング会社、有名な金融機関など、一部の人気業種、職種に偏ってしまいがちである。
 変革の資質を持った人材は、力があるが故に、大手企業・人気企業に入社する可能性が高い。誰もが知っている有名企業に一度入っておくことは、転職の際に肩書きとして有利に働くし、力に見合った給与と、優れた先輩・同期に恵まれるケースも多い。

理由・その二)
 「変革人材」のあり余るパワーを活かせるような組織制度を整えていない会社がいまだに多い
 「新卒一括採用」や「年功序列」は、成長期の日本経済を牽引してきた制度だが、変革人材の採用と育成には極めて不向きだ。しかし、この制度化で成長を遂げた企業は、こういった組織の見直しは過去の成功体験を否定するかのようでどうしても慎重になってしまう。
 いまだに、10年経たなければ部下を持てず、20年経たなければ経営に携われないという企業は多い。コンサルティング会社や外資金融に勤めた20代の社員が、大企業の戦略立案のサポートや、大規模なM&A案件を手がけている今、「10年は泥のように働け」といった要求を若者に対して行っても、優秀な人材から見切りをつけて離れていく。限られた範囲と権限しか与えられていない状態で10年仕事をしている間に、彼ら自身の戦略能力、戦術能力を伸ばす芽を潰してしまっているかもしれない。
 組織が整っていない企業に入社した「変革人材」は、早々に退職して自分の力を存分に発揮できる環境に(起業や転職によって)身を置くか、あるいは、力を発揮できない環境で、いつの間にか凡庸な人材になってしまうか。どちらかの道を選ぶしかない。


 「大手・人気企業」でありながら「若いうちから、力を存分に発揮できる機会がある」という2つの要素を満たしている(ように見える)がゆえに、外資系企業への就職が人気となっている。日本企業への回帰が昨今進んでいるように見えるが、「9割の安定志向、企業頼み」の学生を対象にした人気ランキングは、「変革人材を採る」という視点からは役に立たない。

 必ず抑えておかなければいけないことは、先ほど挙げた、「目的意識」「行動力」「自己理解」「長期的視点」「戦略思考」といった変革の資質を持っているだけではダメで、それを積極的に活かす環境を整えるよう、会社を挙げて取り組む必要があるということだ。

●どうすれば変革人材を採用できるのか

 ここまで論じてきたことをベースに話すと、変革人材を採用するためにはいくつかの条件を満たす必要があることがわかる。

1.変革人材の力を120%引き出し、活かす環境を整えること
2.変革人材にターゲットを絞ったアプローチ(広報)を行うこと
3.変革人材かどうかを見極める選考プロセスを設計すること
 以上3点を満たすことで、企業の規模・知名度にかかわらず変革人材を採用することは可能だ。人材の力を120%引き出し、活かす環境とは、必ずしも、「評価制度や教育制度を整えなければ採用できない」と言っているわけではない。むしろ、それを整えるのは最後で良い。必要なのは、彼らが持っている資質(長所)を見極め、それが最大限発揮できる仕事を与えることなのだ。

 中国の史記に出てくる言葉の中に、「士は己を知るもののために死す」という言葉がある。人材一人ひとりの力を見極め、その力が発揮できる環境を用意し、適切に評価することが、今も昔も変わらない人材採用の極意であり、基本なのだ。

 次回のコラムでは、あるベンチャー企業を題材に、どのように変革人材を採用し育成しているのか、実際に見ていくことにしたい。
福井信英(ふくい・のぶひで)
慶應義塾大学在籍中にジョブウェブと出会い、インターンシップ生として働き始める。
大学卒業と同時に(株)日本エル・シー・エーに就職。経営コンサルタントとして、学校法人のコンサルティングに取り組んだことをきっかけに、2003年3月に(株)ジョブウェブに転職。
現在、新卒事業部の事業部長として、企業の採用活動のコンサルティングや学生を対象とした各種リサーチ、教育研修コンテンツの作成に取り組む。
1977年生まれ。富山県出身。
福井 信英

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