労働政策研究・研修機構の「独立自営業者の就業実態と意識に関する調査」(2017年)によると、1年間で仕事の取引先が1社しかない人の割合は42.9%、2~4社は34.1%も占めています。1社というと、専属的に働いている状況であり、外形的にはフリーランスや個人事業主という形態をとりながら、雇用と自営の中間的な働き方、つまり「雇用類似の働き方」をしている人が多いことがわかります。
ところが、雇用類似の働き方をしている人においては、最低賃金や労災・雇用保険、有給休暇など労働者であれば当然に保障される法律の適用を受けることができず、こうした状況が課題とされています。
契約ルールの整備を議論
厚生労働省は各検討会を設け、契約ルールの整備などを議論し始めています。
今年6月に発表された「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」の中間報告では、これまでの状況を踏まえたうえで、引き続き、契約条件の明示や報酬額の適正化、仕事が原因で病気やケガをしたときのセーフティーネット、発注者からのセクハラ対策、社会保障など、優先すべき課題を中心に、ガイドラインあるいは法的な対応といった手法も含めて検討を行っていくこととしています。
公正取引委員会も企業が個人事業主に不利な条件を強要していないか監視を強めようとしています。昨年2月には、労働分野に独占禁止法を適用するための運用指針となる報告書を公表し、フリーランスも独占禁止法の対象となりました。しかし、具体策はまだこれからといった状況です。
そうした中で、ギグエコノミーの先駆けであるアメリカで州法として成立した新法のインパクトは、決して小さなものとは言えないでしょう。
しかし懸念されるのは、個人事業主・フリーランサーの一部が労働法を適用され従業員化することで、柔軟な働き方が硬直化することです。最低賃金制度を適用させれば、ほかのフリーランスや個人事業主の報酬にまで負の影響が出る恐れもあり、一概によいとは言い切れません。
柔軟で新しい働き方として注目されているギグエコノミー。アメリカと日本では社会保障をはじめ制度内容が相違する部分も多いので、丁寧に精査しながら、日本におけるセーフティーネットのあり方を検討していくべきでしょう。
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