『バブル世代はどうすれば…』(40歳男性) 城繁幸の非エリートキャリア相談
<城繁幸氏の診断>
診断:『時代の狭間で』
90年代に入るまで、この国では誰も「永遠に続く成長」を疑っていませんでした。今考えれば妙な話なのですが、赤字やリストラ、ましてや倒産なんて、誰も想像だにしていなかったのです。投資はした分だけ必ず大きくなって返ってくる。だから新人も前年度+αで採り続け、組織もどんどん大きくしていく。年功序列制度は、こういう時代だからこそ成立しえた特殊なシステムなんですね。私はこれらを全部ひっくるめて“昭和的価値観”と呼んでいます。
でもバブルの崩壊で成長の時代は終わり、リストラや倒産はごく身近なものになりました。特に浮沈の激しいIT業界においては、今後は年功序列のレールを過信することなく、自分のキャリアは自分でデザインしなければならないでしょう。
さて、まずこのまま会社に残った場合を考えてみましょう。急成長中の企業でなければ、ポスト争いは非常に狭き門であり、しかも成果主義の影響で(徐々にですが)若い人間の抜擢が進みつつあります。
ここで重要な事実を一点。現状の成果主義は従来の年功序列制度をベースとしたものであり、やはり年齢が重要な要素であるという点です。つまり、上の序列に上がるには、年齢下限はもちろん、上限もあるということです(たとえば「課長職なら、36歳~42歳が登用対象」という具合)。これを過ぎてしまうと、レールは完全に断ち切られてしまうことになります。
またIT業界であれば、30代のうちに昇給を打ち止めにする企業が主流です。このまま会社に残ったとして、序列や給与が大きく上がる可能性は、残念ながら高くはないでしょう。
とはいえ、大手企業であれば、下請け業務の海外へのオフショアリング等が進んだとしても、職を失う可能性は少ないはずです。そういう意味では、会社に残るメリットも決してゼロではありません。
一方で(相談内容から察するに)元上司に誘われるということは、少なくともマネージャーの立場からみて、評価される人材であるということです。ならば、既存の序列もレールも無い新会社でチャレンジすることは、キャリアアップのチャンスと言えるでしょう。
もし、その後また転職するとしても、たとえば新会社でそれなりのポストを経験されていた場合、転職の幅はずっと大きくなるはずです。