「肩書に執着する50男」ほど心が折れやすい理由 誰もが直面する「人生の2周目」の残酷な現実

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ちなみに心理学者のアブラハム・マズローが提唱した有名な「欲求の5段階説」によると、この「承認欲求」は人間にとって重要な欲求であるとされています。彼は、人間の欲求は低次の段階から高次の段階まで5段階あります。

「生存の欲求」=動物として命を保ち、生存したいという欲求
「安全の欲求」=危険がなく、安全に、安心して生活したいという欲求
「愛と所属の欲求」=集団に属したり、パートナーや仲間を求める欲求
「承認欲求」=他者から評価されたい、褒められ認められたいという欲求
「自己実現欲求」=あるべき自分になりたい、成長したいという欲求

①から⑤までそれぞれ、その段階をクリアしないと次に進めないとしています。つまり、命の危険がある②にいる段階では、趣味のサークルに入りたいとか友達が欲しいといった③の欲求は出てこないということです。

ちなみに「承認欲求」は細かく分けると「他者承認欲求」と「自己承認欲求」に分かれていて、マズローの言う「承認欲求」は「他者承認欲求」と考えてよいでしょう。

「他者承認欲求」とはその字のごとく、他人からの承認ということ。「自己承認欲求」は自分で自分のことを認めることです。職場でもプライベートでも、私たちが社会生活の中で求めている承認欲求は、ほぼ「他者承認欲求」であると考えてよいと思います。

「名誉」を求めるのは人間の性

いずれにしても、承認欲求は人間にとって非常に重要で強い欲求です。例えば名誉職という言葉があります。実質の地位や肩書ではなく、名誉職だからいくら報酬をもらえるというものではありませんが、一種のステータス、権威があります。

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長嶋茂雄さんはジャイアンツの終身名誉監督という称号を得ています。長嶋さんくらいになればそんな称号など必要ないほどすでに国民的スターですが……。

印象深かったのは、ある大学の先生がお辞めになるときに「やっぱり『名誉教授』でも、ないよりはあるほうがいい」と本音を漏らしていたことです。

やはり、人間はいくつになっても名誉が欲しい動物なのです。名誉教授になったからといって、それが即収入につながるものではありません。お金よりも時には名誉、他者からの評価が価値を持つことがあるのです。

齋藤 孝 明治大学教授

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さいとう たかし / Takashi Saito

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー著者、文化人として多くのメディアに登場。著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』(岩波書店)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『質問力』(筑摩書房)、『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)、『読書する人だけがたどり着ける場所』(SBクリエイティブ)ほか多数。著書発行部数は1000万部を超える。

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