――『LEON』を見ていると、ファッションやライフスタイルを啓蒙するというよりは、「俺たちは俺たち」という印象を受けるのですが、それも計算ですか?
『LEON』を創刊したのは今から13年前ですが、それまでの男性誌の多くは、「男はこうあるべき」とか、「男のファッションはこうでなきゃいけない」「ダンディズムが非常に立派なこと」だとか、教条的というか啓蒙するものばっかりだったんですよ。それを見ていて、「教科書みたいなの読んでもつまらないよな」と思っていました。ですから、『LEON』は創刊以来、「上から目線で教える」というスタンスはいっさいやめているのです。
『LEON』は読者・クライアントと一緒に楽しむための雑誌。一緒にエンターテインメントしながら、ファッションやライフスタイル全般を楽しんでいこうという雑誌に仕上げていますね。
海外版を出すことは『LEON』の成長戦略!
――『LEON』は中国版と韓国版も出していますね。
日本の男性誌を海外で大々的に出版するなんて、僕以外に誰も考えていませんでした。
僕が編集長になったのは創刊5年目でした。当時、すでに『LEON』は、かなりの認知度がありましたが、ブランドとして確立しているかといえば、そうではなかったのです。ブランドというものは、つねに進化していかなければならないし、成長もしていかなければならない。そのために取った最初の戦略が海外版を出すことでした。
なぜそれが可能だったかといえば、『LEON』の編集制作のクオリティは世界のメジャーな雑誌の中でもトップクラスですし、日本のメンズファッションの偏差値もかなり高くなっていたからですね。仕事柄、世界中を飛び回って男性のファッションを見てきましたが、イタリアと日本が2トップです。そういったポジティブな要素があるうえに、『LEON』の広告クライアントは海外の有名メゾンや老舗ブランドですから、海外版を出すことで『LEON』のブランドバリューをさらに上げようと考えたのです。つまり、海外版を出すことは『LEON』の成長戦略にとって不可欠な「矢」のひとつだったのです。
――「日本の男性ファッションは世界の2トップ」という言葉に驚いたのですが、本当ですか?
誤解を招くといけないので説明しますと、日本の普通のオジさんのファッションレベルが高いということではありませんよ(笑)。日本人とイタリア人は、素材やサイズ、着心地などにとてもコンシャスで、さらに見た目も気にしますよね。それは国民性というかメンタリティの問題だと思うのですが、そういった部分にまで気を遣う人が多いという意味です。レディスファッションはすでにグローバル化していて、日本の女性もイタリアの女性も、フランスもアメリカも同じようなスタイルを楽しんでいますが、世界中の男たちは意外と保守的なので、メンズファッションにおいては地域格差が激しいのです。特に日本以外のアジア諸国は男の服というかファッションはかなり厳しいですからね(笑)。だから『LEON』の海外版は、潜在的な需要が多いアジアからスタートしたわけです。