「望まない全国転勤」を廃止した会社の秘密

会社側は"失うものの大きさ"を考えるべきだ

ギャップとサイボウズの取り組みが参考になります(写真:今井康一)
今年『なぜ共働きも専業もしんどいのか 主婦がいないと回らない構造』を上梓したフリージャーナリストの中野円佳さん。サイボウズ社長の青野慶久さん、元ギャップジャパン人事責任者で現在はFunleash CEO兼代表取締役の志水静香さんを招き、日本の企業が抱える強制転勤の問題について、鼎談形式で話し合ってきた。
今回も前回記事に引き続き強制転勤と、新たに男性育休について語り合う。サイボウズとギャップジャパンの先進的な転勤の取り組みや、育休を実際に取ったときに感じたことなど、青野さん、志水さん、中野さんに話を聞いた。
前回記事:不都合だらけ「強制転勤」はこうして撲滅できる

サイボウズとギャップジャパンの先進的な取り組み

――青野さんにお伺いします。前回の鼎談で、イタリアのナポリでリモートワークをされているサイボウズ社員の一例が紹介されました。サイボウズは、転勤についてどういう取り組みをされていますか?

青野慶久(以下、青野):サイボウズも昔は転勤をお願いして、断る権利をメンバーが持っていました。上司が起案して、社員本人が承認する形です。しかしそれでは生ぬるいということで、「働く場所をメンバーが自分で決めるルール」にしました。社員一人ひとりに主体性を持たせるために、働きたい場所を本人が自ら提案する。受け入れ部署がOKをしたら働ける。現在はそういう形に落ち着きました。

おかげで転勤手当がなくなりました。手当を目当てに、転勤を受け入れる社員もいるかもしれないので。メンバーが自立的に働く場所を選ぶと、今までの報酬の仕組みも変わってくると思います。

中野円佳(なかのまどか)/ジャーナリスト。東京大学大学院教育学研究科博士課程在籍。東京大学教育学部卒業後、日本経済新聞社入社。金融機関を中心とする大企業の財務や経営、厚生労働政策などを担当。2014年、育休中に立命館大学大学院先端総合学術研究科に提出した修士論文を『「育休世代」のジレンマ』として出版。2015年に新聞社を退社し、「東洋経済オンライン」「Yahoo!ニュース個人」などで発信を始める。現在はシンガポール在住、2児の母。その他の著書は『上司のいじりが許せない』(撮影:今井康一)

中野円佳(以下、中野):その形で会社を動かすと、埋まらないポストも出てくると思います。埋まらないポストはどうされているんですか?

青野:例えば、サイボウズは仙台に営業所を作りたかったんですね。営業部長から市場性も上がっているとの報告があったので、「仙台営業所を作るので、行ってくれませんか?」とお願いすると、「嫌です」と。結局半年以上、仙台営業所が立ち上がりませんでした。

つまり「埋まらないポストは埋めない」のです。埋まらないということは、今いるメンバーが行きたがっていないということですから。

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