日韓不和なのに空前の「韓国文学ブーム」のなぜ

韓国フェミニズム特集の「文藝」86年ぶり増刷

読んだ文学に新しさを感じたことが、晶文社時代に一度に6冊の刊行を決める、といった大胆な企画へと斉藤氏を向かわせた。

「日本の文学は内面に向かいがちだけど、韓国には、国民のみんなで権利を勝ち取ってきたという意識がすごく強く、作品の社会性が強い。私が出したシリーズは純文学だけど、エンターテインメントとしてもよくできているもの。1970年代以降に生まれた若い著者たちは、日本のカルチャーを享受した世代です。今を生きる切実さや喜びや怒り、悲しみが海を越えた国の私たちにも琴線に触れるのではないか、と思ってスタートしました。

固有名詞を抜けば、自分の国のモノのように読めるものを選んで翻訳しています。ほかの出版社の人たちも、それぞれ面白いと思うものを真剣に選んだことが、今の人気につながっているのではないでしょうか」(斎藤氏)

文学の変化が始まったのは1990年代

クオン代表で、神保町で韓国語の原書および翻訳書を扱うブックカフェ「チェッコリ」を営む韓国からのニューカマー、金承福氏は、問題意識が濃厚な作品が多い理由を、1960年代までに生まれた作家たちがこれまで、「南北分断や民族の問題」を描いてきた歴史がベースにあると話す。変化の始まりは1990年代。

「チェッコリ」には韓国語の原書や翻訳書が並ぶ(筆者撮影)

「1992年に国家や民族でないテーマを歌う、ソテジワアイドゥルというK-POPグループが登場した。その頃から、個人を描いた村上春樹や村上龍、吉本ばななの小説が入ってくる。

民主化運動の影響もあって、1990年代末には個人を描いた作品が登場する。なので、私たちは2000年以降の作品を出しています。それらの作品は個人の話を描いているけれど、社会問題も入っている。いくつものレイヤーがあるのです。

そこに加えて、韓流ブームが日本で続いています。韓国のモノはかっこいいというイメージがあるところへ、今ようやく文学まで流れが来たと思います」(金氏)

近年、勢いがあるといわれる1970年代以降に生まれた作家たちは、日本の文学作品にも親しんできた。1989年には海外旅行を自由化し、1998年に金大中が政権を担い、公式に日本文化開放をしたという、自由な時代を生きてきた世代といえる。

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