だが、この論文はまだ試験管内実験レベルでの成功。ハーバード大でサルへの実験が行われ、ある程度成功を収めているというが、ヒトへの応用にはまだまだ時間がかかる。また、この原理のメカニズムの解明も必要だ。長期的に成すべき研究テーマは数多い。
一方で、論文の掲載後は世界中の研究者の検証を受ける。こういった手続きを経て、初めて評価が確定することになる。ネイチャー誌への論文掲載はスタート地点であって、本当の評価はこれからだ。
さらに、2013年に東北大学の出澤真理教授のグループが骨髄や皮膚などの生体内に存在する多能性幹細胞を取り出す技術で国内特許を取得するなど、近似する研究を進めている研究者も世界中にいる。
必要なのは若い研究者の長期的な育成
日本人の科学系ノーベル賞受賞者のほとんどが、受賞理由となった研究論文を発表したのは30~40歳代だ。なかでも1949年に物理学賞を受賞した湯川秀樹博士の中間子理論や2002年に化学賞を受賞した田中耕一氏の研究は、いずれも28歳の時と最も若い。61歳の時の研究が受賞対象となったニュートリノの小柴昌俊博士は例外的存在だ。
今回の発表を機に、博士のプライバシーに関する取材が殺到し、研究に支障を来たすまでになっている。分子生物学の研究は日進月歩であり、世界との競合も厳しい。時間ばかりでなく、研究資金獲得という障壁もある。
科学立国を目指す日本がまず成すべきことは、科学者個人に対するのぞき趣味を排すると同時に、目先の研究成果に一喜一憂することなく、長い目で若い研究者を育てていく姿勢だろう。
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