ドンキ、営業経験がない「異色社長」誕生のわけ コンサル出身者が国内外での拡大戦略の要に

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営業畑出身の社長が続いてきたドンキにとって、吉田氏は異色の新社長となる。創業者である安田氏を除いて、これまでパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの社長を務めたのは2005~2013年の成沢潤治氏(当時は株式会社ドン・キホーテ)と、2014年からの大原社長(2015年からはCEO兼任)の2人。

両氏はドンキ店長などを経て、営業成績で社内トップを競い合ってきた、文字どおりの「たたき上げ組」だ。仕入れや値付けなどの権限の大部分を店舗に任せる個店主義と、仕事の実績が給与に大きく反映される実力主義が特徴の同社では、営業出身のたたき上げ組が社長となるのが自然な流れだった。

それが今回、なぜ非営業部門出身の吉田氏が選ばれたのか。

「必要なのは経営のプロ人材」

決算説明会では、CEO退任後は公の場へ滅多に出なくなった安田創業会長が、突如ビデオ出演する場面があった。安田創業会長は吉田氏選出の理由について、「(売上高)2兆円規模の会社となり、営業部門出身者の経営だけでは金融機関や政府、総合商社などとの折衝がとても回っていかない」とした。そのうえで、「不可欠なのは経営のプロ人材であり、それは吉田においてほかにない」と、強調した。

1番左に座るのがパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの吉田直樹・次期社長(写真は2018年10月のもの、撮影:梅谷秀司)

ドンキは今年、タイや香港への進出も果たすなど海外展開を加速している。国内外問わず事業拡大が続く中、多方面での調整能力に優れた吉田氏の手腕を生かすというわけだ。

これまでは大原社長が営業トップとしても指揮を執ってきたが、吉田氏は社長就任後も商品政策などの営業マターについては口出しをせず、営業出身の取締役常務執行役員4人を含めたチーム経営を重視する方針という。「営業に関してはしかるべき人材に権限を完全に委譲して、切磋琢磨しながら新たな時代における企業像を構築していきたい」。吉田氏は壇上で、こう力強く語った。

安田創業会長と大原氏との密な連携が奏功し、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは順調に成長路線をひた走っている。それだけに、今回の社長交代タイミングは、やや唐突な印象も拭えない。

その点について、安田創業会長は次のように説明する。「これまでも大原から、(成長余地の大きい)アメリカ事業に専念したいとの申し出がたびたびあった」、「このほど(売上高1兆円・店舗数500店などを目標とした2020年までの)中期経営計画を前倒しで達成できた」。この2点が、交代時期としての「区切り」になったという。

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