財政検証後の年金改革、次は何を目指すべきか 拠出期間延長と受給開始時期の延長が焦点に

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とはいえ、国民のための公的年金制度である。国民がオプションBをどう評価するかがカギとなる。現段階では、おそらく3つの立場に大別できるだろう。

1つは、65歳まで保険料を払わされるぐらいなら、60歳までで払い終えて年金額が少ないことは甘受し、残りは自分で老後の備えをし、増税を含むオプションBには反対という立場だ。

2つ目は、65歳まで保険料を払うと年金の目減りが防げるのなら、税財源の確保を含めてオプションBには賛成というものだ。3つ目は、公的年金の給付を多くしてほしい人は65歳まで保険料を払い、少なくてもよい人は60歳までで保険料拠出が終わるよう、オプションBを任意選択できる仕組みにする立場だ。

より多くの国民が納得するような議論を

最初の2つは、公的年金に対する期待度が異なる。ただ、公的年金は「強制加入」という国の仕組みである以上、一定程度の画一性はなければならない。画一的に65歳までの保険料拠出を求めるか。国民的な議論が必要だ。

3つ目は任意選択といえども、満額給付の半分である税財源が確保されるのであれば、現行の保険料減免制度を活用して容易に制度設計できるだろう。つまり、支払能力があっても60~65歳の間に保険料を払いたくない人は、保険料を免除する仕組みを使う。その代わり、保険料を払っていない分、年金額は増えない。それを実現するには、65歳まで払う人とそうでない人との間に不公平が生じないようにするための税財源の確保が前提だ。

いずれの選択肢も、オプションBはまだスタメン入りしていない。より多くの国民に納得してもらえるよう、議論を深めるべきである。その際、国民の公的年金に対する期待が多様になっていることを十分に踏まえて議論をする必要がある。

年金の財政検証は、現行の年金財政の健全性を検証するのが主だが、年金制度の改善を目指すオプションも合わせて示されている。検証結果を、単に現行制度の良しあしの評価をめぐって政争の具にするだけでは意味がない。政府与党も、現行制度を小幅に見直せばそれでよいなどとあぐらをかくのではなく、どのような改革をすれば年金制度に対する国民の安心を高められるかを深く検討し、実行すべきだ。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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