財政検証後の年金改革、次は何を目指すべきか 拠出期間延長と受給開始時期の延長が焦点に

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なぜ拠出年数を5年延ばすのか。それは、給付の目減りを防ぐためだ。保険料を多く払えば、年金も多くもらえる。今の基礎年金の保険料は、実質的には60歳までしか払えない。そこで、65歳まで働ける環境を整え、保険料を払う余裕がある人には65歳まで保険料を払ってもらう案である。もちろん、保険料を払えない人には従来どおり、保険料減免制度が適用される。働きたくない人に65歳まで働くことを強いるわけでもない。

この案は、5年前にも提案されたが一蹴された。それは、基礎年金の給付には、税財源も必要となるからである。

財務省の姿勢も変わりつつある

基礎年金の給付財源は、保険料と税が半々である。65歳まで基礎年金分の保険料を支払っても、税財源が手当てできないと半分しか年金を受け取れない。税財源も確保されて初めて満額の基礎年金を受け取れるが、そのためには増税などによって税財源を捻出しなければならない。消費税率が10%に上がってもいないのに、どこからそんな財源を持ってくるのか。財務省も当時反対姿勢が強かった。

しかし、今は様相が変わってきている。5年前には「生涯現役社会の実現」という議論は存在しなかったが、人手不足で高齢者雇用が促され、働きたい人は60歳を超えても働くことが不思議ではなくなった。受給開始年齢の仕組みの理解も浸透した。加えて、今年10月には消費税率は10%に上がる。

もちろん、オプションBを税財源を確保せずに採用することに、財務省は反対するだろう。しかし、税財源が確保できるならやぶさかではないという姿勢に変わり始めている。前回の財政検証でいわば「補欠」だったオプションBは、今回の財政検証で「ベンチ入り」できるレベルになった。だが、具体策を詰める状態といえる「スタメン入り」にはまだ遠い。

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