「年金水準は28年後に現在より約2割低くなる」「低成長なら所得代替率が4割台になる」という報道も目立った。しかし、財政検証は、今の若い世代が老後に受け取る年金が少しでも増えるよう、次なる年金改革を示唆するために行っている。したがって、現行制度を変えない場合の結果に引きずられすぎないほうがいい。
では、次なる年金改革は何だろうか。財政検証で示された「オプション試算」をみると、今後の年金改革の方向性を占うことができる。
「オプションB」こそ意味ある改革だ
まず、以前から提案されている改革案が、中小企業の従業員やパート労働者も厚生年金に加入できるように適用拡大する案である。この案は、今回の財政検証では「オプションA」として試算結果が示されている。
一部は大企業と官公庁ですでに導入済みの案であり、今後は業種ごとに適用拡大の影響を見極めつつ、拡大していく方向だろう。追加の法改正は必要だが、次なる年金改革がこれだけというのであれば、「お茶を濁した年金改革」とのそしりは免れない。
意味のある改革は、今回の財政検証で示された「オプションB」、保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択である。オプションBはオプションAと両立可能で、2014年の財政検証でも取り上げられた。しかし、この5年間、一顧だにされなかったといってよい。
オプションBの内容は、年金保険料の拠出(支払い)は現在60歳になるまでだが、それを65歳になるまで延長し、拠出年数が伸びた分、基礎年金が増額するというものである。
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