人口減だからこそ長時間労働が時代遅れの理由 小室淑恵「働き方改革は売上が上がる話だ」

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小室:NPOでもシンクタンクでもなく株式会社にしたのは、コンサルティング業務を通して、名の知れた大きな企業の働き方を改革することが重要だと考えたからです。

経営者も労働者も、政府に言われたからといって働き方を変えるわけではありません。この国の多くの人が尊敬するのは、トヨタ自動車のような世界的に成功した企業だということを考えると、そのような企業が先陣を切って「変わる」と言ってくれなければ、他の企業や社会はついてきません。

NPOでもシンクタンクでもなく株式会社にしたのは、 あえて営利企業という形にして、自社が働き方改革を実践しながら利益を上げ続ける経営手腕を持っていることが重要だと考えたからです。

弊社はこの14年間、残業ゼロで有休消化100%ですが、東日本大震災の年以外は増収増益を達成できました。

その手腕を持って大企業をコンサルティングして、「働き方改革で売り上げが上がった」という実績を残すことが、働き方改革を社会全体に広げていくには何より大切と思いました。働き方を変えてビジネスで成功したという実績を示さなければ、国全体が信じて付いてくるということは起きないと考えたのです。

働き方改革は、まさに売り上げが上がる話です。決して、「働き方を改革するから、しばらくは売り上げを我慢しよう」という話ではありません。
ところが、経営者にはそのような固定概念が強いので、それを払拭するために、「働き方改革をして売り上げが倍増した」という企業事例を
とにかく多種多様な業種業界で増やしていくことに全力を注ぎました。
その結果、ここ数年は、地方の中小企業も働き方改革への前向きな意識が高まって、弊社も数多くサポートしています。

最繁盛店を閉鎖し、利益が146%に

船橋:そして、ご著書である「働き方改革生産性とモチベーションが上がる事例20社」で紹介されたようなことが起こったわけですね。

小室:はい。さらに驚くような成果事例が増え続けています。例えば盛岡の地ビールメーカー「ベアレン醸造所」(従業員数50人)は、働き方改革で2018年の利益が2016年比で146%に上がりました。桁を間違っているのではありません。「世界に伝えたい日本のブルワリー」で2度目の日本一を受賞しています。

船橋:具体的に、どんな改革をしたのですか。

小室:弊社がいつも提供している「朝メール」「カエル会議」という手法で、職場メンバーで職場の課題と改善について話し合う会議を定期的に行い、ありがとうを伝えよう運動、SNSを活用した情報共有や会議時間の短縮などから始めました。

その中でいちばん印象に残っているのは「最繁盛店」をあえて閉店したことです。駅ビルに入っていた店でしたが、駅ビルとの契約で深夜まで営業しなくてはなりませんでした。駅ビルやショッピングモールなどに出店すると小売側はビル側の要求する営業時間に対応しなくてはなりません。遅番に入った社員の帰宅は日付けを回ってしまいます。子育てや介護中の人にはとても無理です。それが原因で社員が辞めていき、採用費と育成費が無駄になるという状態が続いていました。

そこで、最終的に「いちばんの繁盛店であっても閉めたほうがいい」という思い切った発想が社内から出てきたんです。稼ぎ頭の繁盛店を閉めて、自社で営業時間をコントロールできるテナントに入居した結果、若い世代の定着率が上昇しました。それが売り上げと利益のアップに直結しました。それまで会社を辞めていた人たちは、子どもがいるとか介護があるといった理由でやむなく会社を去っていたんです。

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