近年、さまざまな業界で問題が顕在化しているパワーハラスメント(パワハラ)。セクシャルハラスメント(セクハラ)は1999年施行の改正・男女雇用機会均等法で事業主の配慮義務を定め、2007年から事業主に防止措置を義務付けていますが、パワハラを規制する法律は意外なことにありませんでした。
ようやく今国会でパワハラの規制法が可決・成立し、2020年4月から大企業で施行(中小企業は同時期に努力義務、その後2年以内に義務化)される見通しです。法制化によって、いったい何が変わるのでしょうか?
ハラスメント対策は世界の潮流に
労働局へのパワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」の相談は、2017年度で約7万2000件、相談内容別では自己都合退職や解雇などの相談を上回り6年連続で最多。こうした状況を受け、ようやく日本も法制化に踏み切りました。
時をほぼ同じくして6月21日、国際労働機関(ILO)が仕事上でのパワハラ・セクハラを禁じる初めての国際条約を採択しました。
この条約では、仕事での暴力とハラスメントを「身体的、心理的、性的、経済的被害を引き起こす、または引き起こしかねない、さまざまな受け入れがたい振る舞いや慣行」と定義。
これらの行為を法的に禁止します。批准する国は、条約に沿った国内法の整備などが必要となり、加盟国はILOに国内の運用状況を定期的に報告する義務が生じます。日本は条約の採択に賛成したものの、批准するかどうかについては、慎重に議論を進めていく姿勢を示しています。
国外のハラスメント対策について、スウェーデンでは、ハラスメントは差別であると位置づけられており、職場で差別行為を行った場合、罰金を科される可能性があります。フランスでも、職場でのモラルハラスメントは法律で禁止されており、罰金や禁固刑を科されることもありえます。
ILOによると、職場のハラスメントを刑事罰や損害賠償の対象として直接禁止する国は、調査した80カ国中60カ国。ようやく法制化にこぎ着けた日本では、企業にパワハラの相談窓口設置などを義務づけるものの、条約が求めるハラスメントを直接禁止したり、制裁したりする規定はありません。先進7カ国(G7)でこうした規制がないのは、日本だけという状況です。
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