船橋洋一(以下、船橋):「政策起業」ということを考えるとき、ぼくは企業の果たす役割も大きいと考えています。とくにコンサルティング企業ですね。例えば、マッキンゼーや、コンサルタンシーではないけれどゴールドマンサックスなんかにも大きなシンクタンク機能があって、そこが研究成果を公に発表しており、その中には優れたものもあります。
営利企業がパブリックに発言したり、働きかけようとしたりするとすぐに「ロビー」と捉えられがちですが、必ずしもそうではなくて、企業の中でパブリックアフェアーズを担う人たちの仕事がますます重要になってきていると思っています。
そこで、伺います。小室さんは資生堂から職業人としてのキャリアを歩み始め、新人時代に「育児休業者の復帰支援プログラム」を提案して社内のビジネスコンテストで優勝されたのが、後の起業のきっかけとなったそうですが、資生堂時代を含め起業に至るまでのことを少し話していただけますか。
育休取得者の復職支援策をビジネスに
小室淑恵(以下、小室):1999年に入社し、社内コンテストで優勝したのは入社2年目でした。当時、資生堂は日本で2番目に育児休業者が多い企業で、常時300人もの育児休業者がいました。そして、資生堂においてはその人たちは大半が復職し、休職前と変わらず戦力となって働いていました。ところが、他社では育休を取ったら辞めさせられてしまったり、復帰できたとしてもラインからは外されてしまったりというのが当たり前でした。
資生堂には育休者を復帰させ、活躍させるノウハウがあるわけだから、育児休業を単なるブランクとせず、スキルをブラッシュアップするeラーニングとセットにして、B to Bで企業にノウハウを販売したらビジネスになると提案しました。
「社内で培ったノウハウを社外に売って、日本のいろんな企業で育休者が復帰できるようになれば、日本社会そのものが活性化する。今後、労働人口不足が深刻化する日本で、女性の活躍でそれを補っていく社会をつくるビジネスです」と役員会でプレゼンしました。資生堂はそれまでB to Cの個人消費者向けのビジネスだけでしたから、新鮮だったとも思います。
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