女性だけが獅子奮迅する社会はもう続かない 小室淑恵「男性の育児休業は義務化が必要だ」

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小室:これも本当に偶然の積み重なりでした。きっかけは、河野太郎さん(現外相。内閣府特命担当大臣、自民党行政改革推進本部長などを歴任)に「霞が関の働き方改革」について直談判に行ったことでした。1000社の企業をコンサルティングしてきて気づいたことは、どんなに一企業ごとに生産性をあげて業務改革をしても、中央省庁と関係するビジネスをしている企業は金曜の夜に突然、月曜の朝までに書類を出せと言われるようなオーダーに振り回されて長時間労働になる。当時、行革大臣だった河野さんに、「霞が関と永田町が変わらなければ、この国の過労死はなくせない。若手官僚と民間有識者で霞が関の働き方を考える大臣の私的な検討会を作るべきだ」と直談判しました。

それまで政治家は100回押さないと動いてくれないと思っていましたが、河野さんは「来月、それを作ろう。小室さん座長ね」となりました。

その後、河野さんには何度かディスカッションの機会をいただき、そのたびに「日本は人口オーナス期であり、このままでは労働力人口不足で財政破綻になるのだから国を挙げて長時間労働の是正をするべきだ。そのためには労働基準法の改正を考えるべきだ。総理にもこの問題意識と解決策を伝えなくては」とお話していました。

すると、経済界の方が300人ほど集まるG1という会合で、河野さんが「今だ、総理に時間をもらおう」と言うんです。会場には安倍首相にかなり近い人物がいらっしゃいました。

「小室さんのプレゼン次第で、大切なことだと思っていただけたらパスが通るから」とご紹介いただきました。人生において、重要なプレゼンはいつも突然にやってきて、本当に焦ります。あまりに突然で驚きながらも私は必死で「あと数年で、日本は人口を増やせる可能性のある期間が終わります。団塊ジュニア世代の女性たちがまだ出産期にある今のうちに、本気で働き方を変えなくてはタイムリミットが来てしまうんです! 働き方改革の必要性と緊急性を総理に説明させてください」と申し上げました。

その数カ月後に、突然、官邸から連絡があり、総理にお会いすることになったのです。2016年5月のことでした。

船橋:安倍首相との面談では、法案まで用意されていたと知り、これにも驚きました。日本では国会議員でも自ら筆をとって法案を書ける人、そういないのではないですか。

男性が家庭で活躍する社会に

小室:パワーポイント1枚分に記した本当に稚拙なものでしたが、もしも聞いていただけたら、できる限り具体的にお伝えしたいと思って、とにかくできる限りの準備をしていきました。

総理との面談は10分と言われていましたが、結果として25分間、聞いていただきました。「2100年に日本の人口は現在の4割になると予測されているけれど、この状況を救えるのは、団塊ジュニアの出産適齢期が終わってしまう前の、この2~3年の間に適切な対策ができるかどうかにかかっている」とお話ししたとき、総理の目の色が変わって「もっと早くやっておくべきだった。でも小室さんは具体的に何をしろと言うの」と言われました。

「具体的には、これです」と、用意していた法案をご覧いただき、「36協定(労働基準法36条に基づく労使協定で、会社が法定労働時間を超えた時間外労働を命じる場合、労働基準監督署への届け出を義務付けている。罰則もある)に上限を付ける」こと、インターバル規制を義務化することの2点を提案しました。そこから数々の議論と困難はありましたが、今年2019年4月、ついに改正労働基準法が施行され、70年間の労基法の歴史上はじめて36協定には上限が設定され、インターバル規制は努力義務として入りました。

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